昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十二)の五

2011-08-06 21:21:58 | 小説
「アナスターシア!
そろそろ、
就寝タイムです。
明日は、
雑誌社の取材と対談が入っていますから。」
夜更かし厳禁のアナスターシア、
前田に諭されベッドへ入った。
「Sayoko,
Come here!」
一つ一つの単語を区切り、
はっきりと発音するアナスターシア。
何とか、
サヨコと意思の疎通を図ろうとする。
しかし英語の授業を受けていない小夜子には、
どうしても理解できなかった。
「一緒に寝ましょう、
って言ってるのよ
イエスと言ってあげて。
了解、
という意味だから。」
前田が耳元で囁いた。
「イエス!」

背中越しにアナスターシアに抱き付かれて、
なかなか寝付けない。
幼い頃からひとり寝を強いられてきた小夜子には、
初めての経験だ。
幼児期には誰とて母親の胸に抱かれるものだが、
体に異変を感じていた澄江は、
心を鬼にしてひとり寝を強いた。
どんなに泣き叫ぼうとも、
抱きかかえることのない澄江だった。
以来、小夜子は癇の強い赤児になった。
「Sayoko,
Sayoko,・・」
何やら話し掛けてくるが、
分かるはずもない。
アナスターシアにしても、
百も承知でのことだ。
しかしそれでも、
通訳を申し出る前田に対し
「No thankyou!」と、
断った。


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