昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

恨みます (二十二)

2022-07-16 08:00:24 | 物語り

一樹さんのお役、、、むっ、むうぅぅ」
「小百合!」
 一気に手元に引き寄せると、そのまま小百合の唇を奪った。
突然のことに目を丸くしながら“なに、なに? どういうこと?”と、いまが理解できない小百合だった。
“ありがとさん、です。これから、いい思いをさせてやっから。
上客になってくれ、頼むぜ。おブス、さん”

一樹の素っ頓狂な声が部屋に響いた。
「なんだよ、これえ! こんなん、ありい? なんで、おっぱい、小さく見せるかなあ?」
小百合への問いかけというよりは、驚嘆の声を上げた一樹だった。
 Fカップはあろうかという乳房が、窮屈に閉じ込められた布切れから解放され、ぶるるんと大きく揺れた。
心の準備がまるでないままの、突然の凶事に思えた。
その時、小百合の頭の中に恐ろしい考えが、浮かんだ。
“やっぱり、痴漢行為は、あの男の人じゃなくて。一樹さん、だったの?” 

「お願いです、やめて下さい!」と、声をふりしぼった。 
“まずかったか? ちょっと急過ぎたか? システムの説明、まだしてないや。ここらで、やめとくか”
「ごめん。いきなりで、ほんと、ごめん。これで、帰るわ。
商品がとどくころに、また来ます」
 ドアの閉じられる音を、放心状態で聞いた小百合だった。
「なんなのよ、なんなの! 商品を買わせるために、あんなことしたの? 
それで、白馬の騎士を演じてみせたって、いうの? ばか、ばか、バカァ!」

 不思議に、恐怖感はなかった。怒りのきもちも、湧いてこなかった。
そうなのだ。部屋に誘ったときに、小百合のこころの奥底に、こうなることを、いやなってほしいと思うものがなかったわけではないのだ。
ただ、あまりに突然のことに、パニック状態におちいってしまったのだ。
“五日後? 来てくれるの? ほんとに? どんな顔で待ってればいいの?”



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