昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十六)の三

2011-09-19 20:32:27 | 小説
「許すも許さないも、これは僕の問題です。」
「馬鹿者!親の言うことを聞けんとは、どういうことじゃ!」
「お言葉ですが、お父さん。
今は、民主主義の時代です。
戦前とは、違います。
僕の人生は、自分で決めます。」
「正三、お父さんに謝りなさい。
お父さんに逆らうなんて、どうかしてます。
以前のお前は、聞き分けの良い子だったのに。」
二人の口論を聞いていた母親が、慌てて間に入った。
「タカ!お前が甘やかすから、こんな口答えをするんだ!
躾が、悪い!」
「お父さん!お母さんを責めるのは、筋違いです。
世の中が変わったんです。
現人神の天皇陛下が、人間宣言をされるような時代なんですから。」
「な、何ということを!
お上が、本心からそのような事を仰られる筈がない。
進駐軍に強要されたのだ。
恐れ多いことだ、まったく。
もう良い!とに角、わしは許さんからな。
それにお前は、もうすぐ東京に行く身だ。
あんな女のことなど、すぐに忘れてしまうじゃろうて。」
吐き捨てるように言い残すと、正三の声に耳を貸すことなく立ち上がった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿