昭和の恋物語り

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大長編恋愛小説 【ふたまわり】(一)の2

2011-02-14 19:49:48 | 小説
大半の国民が茫然自失となる中、
“俺は成り上がってやる!”
と意気込む男達が居た。
戦時中、
新兵として軍隊入りし
辛酸をなめ尽くした男、
御手洗武蔵もその一人だった。

“宮本武蔵のように強い男であれ!”との、
両親の親心から付けられた名前であった。
しかしそんな親心とは裏腹に、
幼い頃は虚弱体質で体格も貧相だった。
家の貧しさも手伝い、
栄養失調気味の少年だった。

小学校への登校途中における同級生からの悪戯攻め、
そして授業中における言葉の暴力に悩まされた。
御手洗という苗字のせいで、
「便所が通る、
くっさいぞ!」と、
毎日のようにからかわれた。
鼻をつまむ仕種をしながら、
武蔵を追い越したりすれ違ったりする。
それが、
日常茶飯事のことだった。
担任に訴えても、
“みんな、
仲良くしてやりなさい。”という、
通り一遍の対応でしかなかった。
“いじめられる側に問題あり!”
とする風潮が、
学校だけでなく世間にも
充満している時代だった。



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