昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (二十)

2010-11-23 18:04:25 | 小説
「お父さんも、
年とったわね。
ここに白髪があるわ。」と、
後ろから娘の声が。
「抜いて上げる。」と、
私の白髪を抜いてくれました。

あぁ、その時です、
まさしくその時なのでございます。
腰をかがめていた私の背にのし掛かるようにしてのことでしたので、
娘のやや固い乳房の感触が心地よく伝わってきたのでございます。
いくら血のつながらない親子とはいえ、
十六年間娘として育ててきたのでございます。

まさにその時でございます。
その娘に対し、
一瞬間とはいえ欲情を覚えたのでございます。
恥ずかしながら、
私の逸物が反応していました。
恐ろしいことでございます。
畜生にも劣ります、
はい。

しかし娘にしてみれば、
何ということもなかったのでしょう。
機嫌良く、
学校に出かけました。
♪ふんふん♪と
鼻を鳴らし、
「行って来ま~す!」と、
妻譲りの美しい声を残して行きます。

その日の私ときたら、
まるでだめでございました。
どうにも落ち着きません。
菓子作りでも、
失敗の連続でございました。

折角練り上げた生地に、
あろうことか
更に水を足してしまいまして。
餡にしましても、
ほど良い甘さに仕上げていたものを・・
これも又、
お恥ずかしいかぎりでございます。
砂糖を足してしまい、
まったくのお子様向けになってしまいました。

形を整える折も、
つい娘のことを思い浮かべてしまいます。
うさぎを作っているつもりが、
耳が無いのでございます。
耳が無くては、
うさぎとは申せません。
桃の形を作ろうとして、
栗になってしまったり。
まったくの、
上の空でございました。


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