「いやあ、見違えました。女性だったんだ、坂井さんも。眩しいぃぃ!」
と、彼は大げさに手で目を隠す仕種をした。
「なあに、それ。失礼よ、少し。うぅーん、相当だわ。それが、食事をご馳走して貰う者の言う言葉?」
「ごめんなさい、誉めたつもりだったんだけどな」
彼自身、驚くほどに自然な会話になっていた。
女性との会話を苦手にしている彼だったが、貴子に対しては滑らかに言葉が出てくる。
いや、というよりは今日からと言えるだろうか。
大勢の中ではガヤガヤと話が出来ても、対一となると会話に詰まってしまっていた。
大学の構内では、全くと言って良いほど無口だった。同年代が相手だと、聞き役に回っていた。
デパートでは、殆どが年上の女性だった。
彼の母親と、さ程変わらぬ女性もいた。彼にしてみれば、安心感があった。
高卒という学歴に対し優越感を感じてもいた。
多少の馬鹿をしても許される雰囲気があったのだ。
「意外だわ。御手洗君て、こんな人なんだ。話しにくい男の子だと思ってた、私」
「そうですよ、僕は生真面目人間ですょ。女性との会話なんて、とおんでもないことですよ」
「なあに、それ。女性じゃないってことなの、私は」
「いやいや、坂井さんは十分に魅力ある女性です。ただ、ご馳走してくれる女性とはお話が出来るんです」
「現金なのね、まったく」
テーブルをはさみながらの会話は、周りの静けさに気兼ねして身を乗り出してのひそひそ話だった。
為に、彼の鼻孔を貴子のオーデコロンがくすぐる。
それは麗子の甘ったるいバラの香りではなく、スッキリとした柑橘系の香りだった。
と、彼は大げさに手で目を隠す仕種をした。
「なあに、それ。失礼よ、少し。うぅーん、相当だわ。それが、食事をご馳走して貰う者の言う言葉?」
「ごめんなさい、誉めたつもりだったんだけどな」
彼自身、驚くほどに自然な会話になっていた。
女性との会話を苦手にしている彼だったが、貴子に対しては滑らかに言葉が出てくる。
いや、というよりは今日からと言えるだろうか。
大勢の中ではガヤガヤと話が出来ても、対一となると会話に詰まってしまっていた。
大学の構内では、全くと言って良いほど無口だった。同年代が相手だと、聞き役に回っていた。
デパートでは、殆どが年上の女性だった。
彼の母親と、さ程変わらぬ女性もいた。彼にしてみれば、安心感があった。
高卒という学歴に対し優越感を感じてもいた。
多少の馬鹿をしても許される雰囲気があったのだ。
「意外だわ。御手洗君て、こんな人なんだ。話しにくい男の子だと思ってた、私」
「そうですよ、僕は生真面目人間ですょ。女性との会話なんて、とおんでもないことですよ」
「なあに、それ。女性じゃないってことなの、私は」
「いやいや、坂井さんは十分に魅力ある女性です。ただ、ご馳走してくれる女性とはお話が出来るんです」
「現金なのね、まったく」
テーブルをはさみながらの会話は、周りの静けさに気兼ねして身を乗り出してのひそひそ話だった。
為に、彼の鼻孔を貴子のオーデコロンがくすぐる。
それは麗子の甘ったるいバラの香りではなく、スッキリとした柑橘系の香りだった。
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