昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (八) ねえ、飲もうかあ

2015-01-15 08:56:53 | 小説
「ねえ、飲もうかあ」
突然、耀子が立ち上がった。のぶこは、待ってましたとばかりに
「そのつもりで来たのよ、ホントは。ミタ君、いいでしょ?」
と、またしても彼に抱きついてきた。
アルコールが入っているのか、ほんのり桜色の顔色であることに、彼は気が付いた。
”そうか。だから、言葉遣いがいつもと違うんだ”

「ミタちゃん、のぶこは凄よまさしく、うわばみだね。
もう気が付いたと思うけど、すぐに抱きつく癖があるしね。ミタちゃんには、刺激が強すぎるかな?」
耀子は、英文字ラベルの付いたウィスキーを、グラスと共に運んできた。

更に、たっぷりの氷が入ったアイスペールをテーブルに置くと
「さあ、飲もう! そうだ、のぶこ。何かおつまみ作ってよ。絶品なの、のぶこのおつまみは」
と、のぶこを急かせた。
「ええっと、何に乾杯する? やっぱり、ミタちゃんの歓迎ね」
「そうそう。ミタ君に、かんぱあい! ようこそ、女の園へ」

並々と注がれたウィスキーを、さも美味しそうに二人は飲み干した。
彼には初めてのウィスキーであったが、二人につられて一気に口に流し込んだ。
「ゴホッ、ゴホッ!」
水で割ってあるとはいえ、アルコール度の高いウィスキーに、彼はむせかえった。

「ウィスキーは、ひょっとして初めて? そうかあ。ビールだったんだ、いつもは」
耀子がすぐに彼の背中をさすり、のぶこは水の入ったコップを彼に手渡した。
「大丈夫? ゆっくり、少しずつ飲みなさいね」
耀子の優しい言葉に頷きながら、「もう大丈夫です」と、手を上げた。

「私たちのペースに合わせたらだめよ。さあ、このサラミでも食べて。
それとも、この女子大生巻きにする?」
と、長めに切った竹輪の輪に人参を入れたつまみを勧めた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿