昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 七

2010-07-13 21:17:59 | 小説
「坊ちゃん、
ありがとさんで。」と、
八百屋の親爺は
次郎吉の剣幕に恐れをなして、
ペコペコとしつつ走り去った。

「さあ、
もう大丈夫だ。
それ、
そいつを喰いな。
そうだ、
小遣いをやるから、
腹が減ったら団子でも買いな。」

次郎吉は、
一朱銀二枚を子どもの手の平に入れてやった。

「ありがとう、
おじさん。
このリンゴ、
おじさんにやるよ。
俺、
もう腹一杯だ。」と、
まぶしそうに次郎吉を見上げると
半分食べ残しのリンゴを差し出した。

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