「どうしてついてくる!」
大男の怒声に恐れをなして、子供たちが一斉に大将の後ろに隠れた。
腰に手を当てた大将がゆっくりと大男に答えた。
「なんでそんなにでかいんだ」
小さな目をかっと見開いて、おまえなんかこわくないぞとばかりに一歩前へでた。
ぐっと歯をくいしばり、あごを前に突きだして大男をにらみつける。
両手の拳はしっかりと握りしめられてはいるが、少し震えている。
体が前のめりになってはいるが、いつでも後ろに逃げられる態勢でもある。
右手が後ろにまわり、いつでも逃げられる態勢を取れと合図をしていた。
「つよくなりたい」
かすれ声が続けて出た。
大男を見上げる目には強い光が宿っていて、ぷっくりと膨らんだ鼻や一文字に結ばれた口から意志の強さが感じられた。
「となりむらのれんちゅうにおいかけられるおはなをまもってやりたい」。
絞り出された声に大男がゆっくりと頷いた。
街道筋の田畑の右手には、山々が連なっている。
たなびく雲の下、視線を下げると瓦葺き屋根の庄屋の家が見え、少し離れた場所に藁葺き屋根の小さな家が点在している。
「偉そうに大きな構えをしているのが庄屋の家か。どこも同じだな」
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