昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (四十)

2010-12-22 22:22:47 | 小説
その翌日、
勿論
娘をまともに見られるわけがありません。
その翌日も、
そして又その次の日も・・・、
私は娘を避けました。
しかし、
そんな私の気持ちも知らず、
娘は何かと世話をやいてくれます。
そしてそうこうしている内に、
結納も済み
式の日取りも
一ヶ月後と近づきました。

娘としては、
嫁ぐ前の
最後の親孝行のつもりの
世話やきなのでございましょう。
私の布団の上げ下げやら、
下着の洗濯やら、
そして又、
服の見立て迄もしてくれました。
妻は、
そういった娘を
微笑ましく見ていたようでございます。
何も知らぬ妻も、
哀れではあります。

しかし私にとっては、
感謝の心どころか
苦痛なのでございます。
耐えられない事でございました。
一時は、
本気になって
自殺も考えました。
が、娘の
「お父さん、
長生きしてね!」の言葉に、
決心が鈍ってしまうのでございます。

本当でございますよ、
本当でございますとも。
娘にお聞きください、
妻にお聞きください。
実際に
包丁を手首に当てたのでございますから。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿