昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (九) ナミちゃんもやるうぅ!

2015-02-06 08:46:03 | 小説
「うん、うん。よし、こいこい!」
吉田に抱かれたまま両手を突き出して、臨戦態勢に入った。
「よし、来たぞ。後ろ向きになって、お尻からだ。最初は、お兄ちゃんと一緒にな。せーっの!」
「うおーおぉ!」
雄太の歓声と共に、二人の体が波の中に消えた。
そしてすぐに、バンザイをした雄太が波から出てきた。
「こんどはひとりで、こんどはひとりで!」
「ナミちゃんもやるうぅ!」

二人並んで、波の中に後ろ向きに飛び込んだ。
奈美はうまく波に乗れたが、雄太はその体重の軽さから押しつぶされてしまった。
前のめりに転んだ雄太は、座り込んだまま大泣きしてしまった。
「ごめん、ごめん。まだ雄太一人では無理だったな」

砂浜で見ていた妙子が、大声で雄太を呼んだ。
「雄太あ、ママのところにおいでえ! お弁当、食べようねえ」
「ひくっ、ひくっ。ゆうたも、たべるうぅ!」

雄太は妙子と奈美は吉田と共に、スーパーで買い求めた弁当をパクついた。
「おもしろかったあ。ママァ、お兄ちゃんがおしえてくれたなみのり、すっごくおもしろいよ」
「そう、良かったわねぇ。お兄ちゃんは、遊ぶことの天才だねえ」
「ゆうくんは、ちっともおもしろくないモン」

上機嫌の奈美に対し、雄太はふくれっ面だった。
頭を掻く吉田に対して、妙子は笑顔を見せた。
「仕方ないわよ、そんなの。雄太はまだ三歳なんだから。雄太くんはママと砂遊びしようね」
「すなあそび? ナミちゃんもやる」
「ええっ、だめえ!おねえちゃんは、だめえ!」
「雄太! そんなこと、言うもんじゃないの。みんなで、やろうね。
お兄ちゃんに、大きなお山を作ってもらおうね」


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