昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[青春群像:にあんちゃん] ((20年前のことだ。)) (一)

2025-02-16 08:00:57 | 物語り

 20年前のことだ。
 孝男と道子の結婚生活も7年をかぞえた。
  子宝にめぐまれぬふたりをよそに、高校3年の定男が、同級の女子生徒であるあかりをはらませてしまった。
真剣な思いのふたりは、卒業とどうじに結婚すると宣言した。
「土建業にいく。
給料がいいらしいから。おれ、こいつらのためにいっしょうけんめい働くよ。
おやじには迷惑かけないし。ただ、赤ん坊がうまれてしばらくは、面倒をみてやってください」

 真剣なまなざしで、孝道の目をまっすぐに見て宣言した。
あかりもまた、両親のかおをまっすぐにみる。
親同士の話しあいをもったが、すぐに結論が出るようなことではない。
 あかりの親の怒りは激しく、ただ定男をなじるだけだった。
道孝にしても、ただただ頭を下げるしかない。
二度目の話しあいのおりに「申し上げにくいことですが」と前置きをして、中絶という禁句を口にした。

 あかりの親は、「男の親だからそういうことをいうんだ」と激怒をし、「無責任です!」となじりはするものの、ふたりを結婚させることにはためらいを持った。
そして結論が出ぬままに、ひと月が過ぎた。
 冷静さをとりもどした双方の間で「中絶やむなし」の結論になったとき、ふたりが家を出た。

「あんたんとこの息子が娘をつれだしよった。どう責任を取ってくれるんだ!」
 その翌日、女子生徒の親がどなりこんできた。
オロオロとするシゲ子を、「あんたの教育が悪い!」と責め立てた。
「若いふたりの過ちだ。片方だけを責められてもこまる」
と、孝道がこんどばかりは反論した。
警察で誘拐だとさわぎたてたものの、家出捜索として受理することになった。



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