昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十九) お爺さまは知らぬ顔

2013-10-31 14:39:26 | 小説
(五)

「申し訳ありません。小夜子さまのお立場も考えずに、勝手なことを申しました。
いやだわ、あたし。

小夜子さま、お時間の方はよろしいのですか? ひょっとして、もう…。
宜しかったら、駅までお送りさせていただきますけれど」

「ごめんなさい、ハイヤーが来る時間かも? 
そうね、ご一緒していただける? 

どうせお爺さまは知らぬ顔でしょうから。

今朝も早く出かけてしまって。
夕べもね、ふてくされてしまって」

「きっと、お淋しくなられるからでしょう。
父もそうでしたから。

正三兄さんの上京時には、やはりどこかに雲隠れしてしまって。
その点、母親は強いです。

あ、ごめんなさい。
お母さまのことは禁句でした」

恐縮して体を縮ませる幸恵だった。

「いいのよ、大丈夫。それより…あ、来ましたね。
では、その荷物をお願いできるかしら」


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