昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十九) 四)今だからこそ

2013-10-29 18:38:23 | 小説
(四)

「そうね、それもありでしたわね。
幸恵さんの仰るとおり、もう少し待ってさしあげれば良かったのかも。

でもね、それは今だからこそ言えることなのじゃないかしら。
あの時『いついつまで、待っていてください』とご連絡があれば、あたくしも待っていたかも。

でも、お分かりになる? あの頃の、あたくしの心細い気持ちが。
一人なの、たった一人なの。

誰を頼ることも出来ない地で、たった一人だったの。
そんな時手を差し伸べてくれたのが、タケゾーだったの。

でもね、待ったのよ。
タケゾーの思いは知っていました。

でもそれを押し止めて、タケゾーには『約束した人がいます』
と宣言して、足長おじさんの役目を押し付けていたの。

お嬢さま育ちの幸恵さんにはお分かりにならないでしょうね」

少々時間が気になり始めた小夜子だが、思いつめた幸恵を見ていると、
むげな態度も取りづらくなっていた。


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