彼の視線に気付いた耀子は、
「こらこら、どこを見てるの! 彼女とうまくいっていないの?」
と、妖艶な雰囲気を漂わせながらたしなめた。
貴子や真理子とは違った、大人の女性だった。
ユミの醸し出す色気とは又違ったもので、彼の胸の高鳴りは激しくなった。
学内とはいえ二人きりの部屋で、しかも窓の外では夕暮れが迫っていた。
彼は、慌てて視線を反らすと、
「い、いませんよ、彼女なんて。居たら、こんな時間までここに居ませんて。耀子さんこそ、良いんですか」
と、頭をかきながら答えた。
思わず口にした言葉に罪悪感を感じつつも、”社交辞令じゃないか”と、己を誤魔化した。
それにしても、と感慨に耽る彼だった。
ついこの間までは、女性と話をすることなどついぞできない彼だった。
ましてや、二人きりの部屋で時間を共有するなど、思いもよらぬことだった。
「女なんぞにうつつを抜かしてはいかんぞ! ましてや都会の女なんぞには、だ」
茂作の強い言葉が、彼を縛り付けていた。
人見知りの激しさが取れぬ彼で、そしてまた小夜子に庇護されたこれまでが、彼を縛り付けていた。
それが、麗子そしてユミ、そして貴子を知るに至って大きな変化を遂げ始めた。
「フフフ。ミタちゃんと一緒よ。私の場合は、サークルに熱を入れすぎたお陰で、別れちゃったの。
さあ、始めましょう。今度は、正対してね。腰を密着させて、上半身は少し反り気味にね」
彼は言われるがままに、左手を真っ直ぐに伸ばして指を絡め、恐る恐る右手を耀子の腰に回した。
「ほらっ、もっとしっかり。力を入れて、中心まで回して。もっと体を寄せて」
矢継ぎ早に、指示が飛んだ。ぴったりと下半身が密着した状態で、やっとOKが出た。
「じゃ、始めるわよ。右・左、右・左。そうそう、その調子よ。顔を上げる! 私を見なさい。
はいっ、手をもっと伸ばして。そうそう、いい調子よ」
耀子に引きずられるようにしながも、何とか形になりはじめた。
ぎこちない動きから、流れるような動きが取れるようになってきた。
静かな部屋の中で、”キュッ、キュッ!”と、靴の摩擦音だけが響いていた。
気が付くと、どれ程の時間が経ったのか、外はすっかり暗くなっていた。
「あら、あら。いま何時かしら。うーん、折角乗ってきたところなんだけどなあ。
このままじゃ、欲求不満になりそうだわ。ミタちゃん、付き合ってくれる?」
「こらこら、どこを見てるの! 彼女とうまくいっていないの?」
と、妖艶な雰囲気を漂わせながらたしなめた。
貴子や真理子とは違った、大人の女性だった。
ユミの醸し出す色気とは又違ったもので、彼の胸の高鳴りは激しくなった。
学内とはいえ二人きりの部屋で、しかも窓の外では夕暮れが迫っていた。
彼は、慌てて視線を反らすと、
「い、いませんよ、彼女なんて。居たら、こんな時間までここに居ませんて。耀子さんこそ、良いんですか」
と、頭をかきながら答えた。
思わず口にした言葉に罪悪感を感じつつも、”社交辞令じゃないか”と、己を誤魔化した。
それにしても、と感慨に耽る彼だった。
ついこの間までは、女性と話をすることなどついぞできない彼だった。
ましてや、二人きりの部屋で時間を共有するなど、思いもよらぬことだった。
「女なんぞにうつつを抜かしてはいかんぞ! ましてや都会の女なんぞには、だ」
茂作の強い言葉が、彼を縛り付けていた。
人見知りの激しさが取れぬ彼で、そしてまた小夜子に庇護されたこれまでが、彼を縛り付けていた。
それが、麗子そしてユミ、そして貴子を知るに至って大きな変化を遂げ始めた。
「フフフ。ミタちゃんと一緒よ。私の場合は、サークルに熱を入れすぎたお陰で、別れちゃったの。
さあ、始めましょう。今度は、正対してね。腰を密着させて、上半身は少し反り気味にね」
彼は言われるがままに、左手を真っ直ぐに伸ばして指を絡め、恐る恐る右手を耀子の腰に回した。
「ほらっ、もっとしっかり。力を入れて、中心まで回して。もっと体を寄せて」
矢継ぎ早に、指示が飛んだ。ぴったりと下半身が密着した状態で、やっとOKが出た。
「じゃ、始めるわよ。右・左、右・左。そうそう、その調子よ。顔を上げる! 私を見なさい。
はいっ、手をもっと伸ばして。そうそう、いい調子よ」
耀子に引きずられるようにしながも、何とか形になりはじめた。
ぎこちない動きから、流れるような動きが取れるようになってきた。
静かな部屋の中で、”キュッ、キュッ!”と、靴の摩擦音だけが響いていた。
気が付くと、どれ程の時間が経ったのか、外はすっかり暗くなっていた。
「あら、あら。いま何時かしら。うーん、折角乗ってきたところなんだけどなあ。
このままじゃ、欲求不満になりそうだわ。ミタちゃん、付き合ってくれる?」
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