昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(九)の七

2011-06-12 10:55:28 | 小説
店内のあちこちに、
ファッションショーのポスターが貼ってある。
「きゃあ!
見て見て、
正三さん。」
17才の小夜子が、
叫んだ。
「すっごぉい!
あの服の、
あの胸の開き方。
映画スターぐらいよね、
あんなの着られるのは。」
「そうですね。
映画スター、ぐらいでしょう。」
即座に正三が相づちを打つや否や、
途端に小夜子の機嫌が悪くなった。
「ふん、
あんな下品な服。」
小夜子の本音としては
“そんなことありませんよ。
小夜子さんなら、
似合いますって、
きっと。”
と、言って欲しかった。
「小夜子さん。
見て回りますか、
店内を。」
正三から見て、
情緒不安定に見える小夜子だった。
機嫌が良かったり、
と思えば不機嫌な顔になる。
どう対処すればいいのか、
どう立ち回ればいいのか、
とんと見当のつかない正三だ。
女性とのデートが初体験の正三にあっては、
小夜子は荷の重すぎる相手だ。
「そうね、
このショーでも見ましょ。」
と冷たく言い放って、
さっさと階段へと向かった。


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