(二十九)
しかし、少したってから口を開いてくれた。
「私、こんなことを、ご本人に向かって言っていいのかどうか分かりませんけど。
でも、やっぱり言います。
でも、気を悪くしないでくださいね。
私、自分が不良のように思えるんです。
無茶な運転の車に乗っていたり、暗いプラネタリウムに入ってみたり、で。」
俺は少なからずショックを受けた。
不良? この俺が?
…そういえば、ずいぶんと昔に思えるのだけれども、
高校一年の時に、そう言われたような……。
佐伯民子、忘れられない名前だ。
この女のせいで、俺の高校生活は最低のものに変わった。
ガリガリ姿の、孝夫。
名字は、覚えちゃいない。
何となく気になる奴で、友だちになりたくて、ちょっとからかっていた。
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