(六)
「そうですよ、お義父さん。
私は中々来れませんが、小夜子には帰らせますから。
出張がちな私です。
その折には夜子に寂しい思いをさせてしまいます。
お義父さんの所にお世話にならせてください。
それでたまには、お義父さんに来てもらいたいです
なぁ、小夜子。
どうだ? 親子水入らずもいいだろう。」
ひとり合点する武蔵、しかし茂作にはいまいましく聞こえる。
“ふん。なんで、わしが行かにゃならん!
娘婿が来るのが当然じゃろうが。
仕事が忙しいからと、舅をないがしろにするような男なんぞ!
まあいい、こんな男に会いたいとも思わん。
しっかりと金を稼いでくれればいいさ。”
“我ながらいい口実を作ったもんだ。
小夜子を実家に帰らせれば爺さんも喜ぶし、俺も……。
こいつは一挙両得の妙案じゃないか。”
と、不遜な笑みをつい洩らしてしまった。
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