昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十八)の六

2013-04-09 20:21:58 | 小説

(六)

「そうですよ、お義父さん。
私は中々来れませんが、小夜子には帰らせますから。

出張がちな私です。
その折には夜子に寂しい思いをさせてしまいます。

お義父さんの所にお世話にならせてください。
それでたまには、お義父さんに来てもらいたいです

なぁ、小夜子。
どうだ? 親子水入らずもいいだろう。」

ひとり合点する武蔵、しかし茂作にはいまいましく聞こえる。

“ふん。なんで、わしが行かにゃならん! 
娘婿が来るのが当然じゃろうが。

仕事が忙しいからと、舅をないがしろにするような男なんぞ! 

まあいい、こんな男に会いたいとも思わん。
しっかりと金を稼いでくれればいいさ。”

“我ながらいい口実を作ったもんだ。
小夜子を実家に帰らせれば爺さんも喜ぶし、俺も……。

こいつは一挙両得の妙案じゃないか。”
と、不遜な笑みをつい洩らしてしまった。


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