(六)
「申し訳ありません。ちょっと昔のことを思い出してしまいまして。
そうだ! 今日は小夜子さまのお帰りだと聞いて、実はこれを」
ぶっとい、ふかし芋を卓に乗せた。
「旦那さまの前では食べにくいのですけど、小夜子さまお好きでしょ?
千勢はだ~い好きでございまして。旦那さまのご出張の折なんかに、ご飯代わりに頂いていたんです」
目をキラキラと輝かせる千勢。小夜子もまた、昔を思い出す。
“おやつ代わりのふかし芋ね。良い思い出じゃないけど、久しぶりね”
ひと口頬張って、
「なにこれ、甘いわ! どうして? ふかし芋って、こんなに甘いものだったの?
あたしが食べていた物と、まるで違うわよ」と、感嘆の声を。
キョトンとする千勢を前にして、驚くほどの速さで一本を平らげた。
「千勢。あなたって、お料理の天才ね。すごいわ、ほんとに」
手を叩いて褒めそやす小夜子に、千勢はどう答えていいのか分からずにいる。
「小夜子奥さま、ご冗談が過ぎますよ」
「で、で? どうだったの、初めての時は。何年になるの、ここに来て」
「はい、十五の時に入らせていただきました。専務さまのご紹介なんです、実は。
一番上の姉がお世話になっていまして。父親が、連絡を入れたようなのです」
「そうなの、千勢もなの」
千勢が五平の世話で武蔵の元に来たとわかり、千勢に対し何か戦友といった観を覚える小夜子だった。
「申し訳ありません。ちょっと昔のことを思い出してしまいまして。
そうだ! 今日は小夜子さまのお帰りだと聞いて、実はこれを」
ぶっとい、ふかし芋を卓に乗せた。
「旦那さまの前では食べにくいのですけど、小夜子さまお好きでしょ?
千勢はだ~い好きでございまして。旦那さまのご出張の折なんかに、ご飯代わりに頂いていたんです」
目をキラキラと輝かせる千勢。小夜子もまた、昔を思い出す。
“おやつ代わりのふかし芋ね。良い思い出じゃないけど、久しぶりね”
ひと口頬張って、
「なにこれ、甘いわ! どうして? ふかし芋って、こんなに甘いものだったの?
あたしが食べていた物と、まるで違うわよ」と、感嘆の声を。
キョトンとする千勢を前にして、驚くほどの速さで一本を平らげた。
「千勢。あなたって、お料理の天才ね。すごいわ、ほんとに」
手を叩いて褒めそやす小夜子に、千勢はどう答えていいのか分からずにいる。
「小夜子奥さま、ご冗談が過ぎますよ」
「で、で? どうだったの、初めての時は。何年になるの、ここに来て」
「はい、十五の時に入らせていただきました。専務さまのご紹介なんです、実は。
一番上の姉がお世話になっていまして。父親が、連絡を入れたようなのです」
「そうなの、千勢もなの」
千勢が五平の世話で武蔵の元に来たとわかり、千勢に対し何か戦友といった観を覚える小夜子だった。
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