(一)
「ほんとにおやさしい旦那さまです。
会社では怖い社長だとお聞きしましたけれど、決してそんなことはありません。
きっと一生懸命におやりにならないから、強くお叱りなんだと思います。
小夜子奥さまもそうお思いでしょう?」
嬉々として話していた千勢。
次第に目が潤み始めて、とうとう最後には涙声になってしまった。
「もうしわけありません、あたしったら。
どうしたんでしょ、悲しくなんかないのに。
違うんですよ、嬉しいんです。
又呼んでいただけるなんて、思ってもいませんでした。
旦那さまにお聞きしました。
お前のことを嫌ったんじゃないぞって。
あたしてっきり小夜子奥さまに嫌われたんだって思って。
悲しくて悲しくて。しばらくの間、実家に戻っていたんです」
小夜子の差し出すハンカチで、笑みを浮かべながら涙を拭く千勢。
「でも、遊んでばかりもいられないので、新しいお屋敷でお世話になっていたんです。
そのお屋敷でもかわいがってはもらえたのですが、やっぱり旦那さまと小夜子奥さまが忘れられずに…。
そんな時に実家から手紙が届いたんです。
旦那さまからお声がかかったけれどどうする?と」
「いつなの、それって。あたし、全然聞いてないわ」
小夜子を思っての武蔵なのだが、ひと言の相談もなかったことが腹立たしくも感じる小夜子だった。
“家事のことは、あたしに決めさせてくれなきゃ”
しかし“武蔵らしいわね。あたしのこととなると、素早いんだから”と、満更でもない。
「ほんとにおやさしい旦那さまです。
会社では怖い社長だとお聞きしましたけれど、決してそんなことはありません。
きっと一生懸命におやりにならないから、強くお叱りなんだと思います。
小夜子奥さまもそうお思いでしょう?」
嬉々として話していた千勢。
次第に目が潤み始めて、とうとう最後には涙声になってしまった。
「もうしわけありません、あたしったら。
どうしたんでしょ、悲しくなんかないのに。
違うんですよ、嬉しいんです。
又呼んでいただけるなんて、思ってもいませんでした。
旦那さまにお聞きしました。
お前のことを嫌ったんじゃないぞって。
あたしてっきり小夜子奥さまに嫌われたんだって思って。
悲しくて悲しくて。しばらくの間、実家に戻っていたんです」
小夜子の差し出すハンカチで、笑みを浮かべながら涙を拭く千勢。
「でも、遊んでばかりもいられないので、新しいお屋敷でお世話になっていたんです。
そのお屋敷でもかわいがってはもらえたのですが、やっぱり旦那さまと小夜子奥さまが忘れられずに…。
そんな時に実家から手紙が届いたんです。
旦那さまからお声がかかったけれどどうする?と」
「いつなの、それって。あたし、全然聞いてないわ」
小夜子を思っての武蔵なのだが、ひと言の相談もなかったことが腹立たしくも感じる小夜子だった。
“家事のことは、あたしに決めさせてくれなきゃ”
しかし“武蔵らしいわね。あたしのこととなると、素早いんだから”と、満更でもない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます