昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(八)の九

2011-06-03 22:35:47 | 小説
「どうぞ、お茶を。
これ、
向こうで買ってきたものですが、
食べてみてください。」
お茶とともに差し出された菓子を、
しげしげと見つめながら
「煎餅かい?
それじゃ、
いただくとするかの。」
と一人が言い
「館山市・・というと、
あの房総半島の館山かい?」
ともう一人が尋ねる。
「はい、そうです。」
澄江が答えるや否や、
茂作が声を荒げた。
「澄江!
そこで今、
興行を打っとるのか?」
「うん。
今月いっぱいはね。
その予定のはずだけど。」
「でかした!
それじゃ、
今から行ってくるぞ。」
今にも立ち上がろうとする茂作に、
澄江は慌てた。
「ど、どこへ?
まさか、
あの一座に行くんじゃ?」
「勿論じゃ。
談判せにゃ、
気がすまん。」
わなわなと手が震えて、
危うく湯飲みを落としかけた。


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