昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(九)の一

2011-06-04 21:59:11 | 小説
小夜子と正三が
各駅停車の鈍行列車から降り立った時、
十時を少し回っていた。
「着きましたねぇ。
あぁ、いい天気だ。
小夜子さんは、
晴れ女なんですね。
ぼくは、
どうも曇り男らしいんです。
雨は降らないんですが、
こんな風に晴れるということがないんです。」
興奮気味に話す正三だった。
「そんなこと、
考えたことありませんわ。
そんなことより、
行きましょう。」
「そうですね。」
うるさがられた正三は、
意気消沈したまま小夜子の後ろに従った。

「正三さん、
気が変わりました。
お帽子は後にします。
生バンド演奏をしている所に行きたいわ。
探して頂けます?」
「は、はい。
えぇっと、
どうすれば・・・。」
初めての場所で戸惑う正三に、
苛立ちを隠すことなく
ぴしゃりと容赦ない言葉を浴びせかけた。
「もう、
使えない人ね!
駅員にでも聞けばいいでしょ!」
「は、はい。
今すぐに聞いてきます。」
そんな二人の傍らで掃き掃除をしている駅員は、
小夜子に振り回されている正三を
侮蔑の目で見ていた。


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