昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十八)

2010-12-19 17:01:44 | 小説
その夜は、
まんじりとも致しませんでした。
「勿論よ!」と、
言い切った時の娘の目の輝きが、
目を閉じると
瞼の裏にはっきりと映るのでございます。

それからの私は、
まさしく
且つての妻でございました。
顔にこそ出しませんが、
心の内では半狂乱でございました。
娘を手放す男親の寂しさもさることながら、
実は、
正直に申しますと、
娘に対して
「女」を意識していたのでございます。

以前にお話ししたとおり、
血のつながりの無い娘でございます。
勿論、
自分自身に言い聞かせてはおりました。
「血はつながらなくとも、
娘だ!」と、
毎夜心内で叫んでおりました。
しかし、
崩れてしまいました。
脆いものでございます、
親娘の絆は。
もっとも親娘は親娘でも・・・。

それからの私ときたら・・・。
娘の入っていることを承知で、
風呂場を覗いてみたり
電気を消してみたり、
とまるで子供でございました。
娘の嬌声に
歓びを感じているのでございます。
そんなことを、
初めの内は勘違いと思っていた妻も、
度重なるに連れ
疑問を抱き始めたようでございます。

私の行動に
目を光らせるようになりました。
そんな時でございました、
あの、
忌まわしい
そして恐ろしい夢を見ましたのは。


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