(六)
大声で叫び続けている小夜子を、産婆は呆れ顔で見るだけだった。
心配顔の千勢に対して
「いいから、このままにしておきなさい。まだまだよ、これからなんだから」
と手で制した。
「でも…。奥さまのご様子、ただ事じゃないと思いますけど」
「大げさなのよ。こんなことでお医者さまの手を煩わせたら、あたしゃ物笑いの種になっちまうよ。
恥ずかしくて、表も歩けなくなっちまうよ。ほっときなさい。
あたしが来るのだって、ほんとは早いくらいなんだから。
これ、小夜子さん。そんなに大きな声で騒ぐもんじゃないわよ。
ご近所に丸聞こえだよ。ご迷惑ですよ、ほんとに。
こんなもの、当たり前の陣痛じゃないか。
三十分の間隔だろうが。まったく情けないねえ、いい若い者が」
ぴしゃりと、小夜子の要求をはねつけた。
「だって、だって。お医者さまの言いつけ、キチンと守ったわよ。
だからこんなに痛いのは、きっとどこか病気なのよ。
急がないと、わたし死んじゃうかもよ。うっ、痛い!痛い! また来たわ。
あ、あ、何とかして。こんなに痛いのは、きっとどこかが」
「しようのない子だねえ、もう。それじゃ、とっておきのおまじないをしてあげるよ。
これをすれば、楽になるからね」
小夜子のお腹を両手でさすりながら、もごもごと呪文らしき言葉を唱え始めた。
大声で叫び続けている小夜子を、産婆は呆れ顔で見るだけだった。
心配顔の千勢に対して
「いいから、このままにしておきなさい。まだまだよ、これからなんだから」
と手で制した。
「でも…。奥さまのご様子、ただ事じゃないと思いますけど」
「大げさなのよ。こんなことでお医者さまの手を煩わせたら、あたしゃ物笑いの種になっちまうよ。
恥ずかしくて、表も歩けなくなっちまうよ。ほっときなさい。
あたしが来るのだって、ほんとは早いくらいなんだから。
これ、小夜子さん。そんなに大きな声で騒ぐもんじゃないわよ。
ご近所に丸聞こえだよ。ご迷惑ですよ、ほんとに。
こんなもの、当たり前の陣痛じゃないか。
三十分の間隔だろうが。まったく情けないねえ、いい若い者が」
ぴしゃりと、小夜子の要求をはねつけた。
「だって、だって。お医者さまの言いつけ、キチンと守ったわよ。
だからこんなに痛いのは、きっとどこか病気なのよ。
急がないと、わたし死んじゃうかもよ。うっ、痛い!痛い! また来たわ。
あ、あ、何とかして。こんなに痛いのは、きっとどこかが」
「しようのない子だねえ、もう。それじゃ、とっておきのおまじないをしてあげるよ。
これをすれば、楽になるからね」
小夜子のお腹を両手でさすりながら、もごもごと呪文らしき言葉を唱え始めた。
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