昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十ニ) 四

2013-05-22 20:35:06 | 小説
(四)

「佐伯君、局長の立場を考えなくちゃね。」

杉田の耳打ちに、やっとひとみの手を離した。
しかしその後も、ひとみを虚ろに見つめる正三だ。

「何を言ったんです? 課長。」

「なに、大したことじゃ。
佐伯君の急所を突付いただけさ。
彼を黙らせる唯一をね。」

「何です、それは。
後学のために教えてくださいな。」

「いやいや、こればかりはね。
さぁさぁ、飲み直そう。」

「そうおっしゃらずに。
我々だって手に負えなくなった時の、対処法を知っておきたいんですが。」

食い下がる山田だが、杉田は素知らぬ顔で興に入った。

「薫ちゃ~ん。
薫ちゃんは、どこにも行かないよね~。」

「は~い! 行かないわよ、
ターちゃんの傍に居るわよ~。
ターちゃんも、浮気しちゃだめよ~。」


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