(三)
そこかしこから、賞賛の声が上がった。
「ひとみちゃんは、すごい!」
「若いの、あんたは偉い!」
万雷の拍手で迎えられたひとみ、得意満面だ。
苦虫を噛み潰していたマジシャンも、最後には拍手で送った。
指名客が来た折などは、ひと悶着だった。
どうしても離そうとはせずに、終いには正三もそのボックスに行くと言い出した。
これにはさすがのマネージャーも困り果てた。
「お客さま、お客さま。必ず、必ず、戻ってまいります。
ほんの少しだけ、ひとみさんをお貸しください。」
ことここに至っては杉田としても、放っておく訳にはいかない。
正三の嬌態を面白がり、やんやと囃していたいた面々も、
さすがに他の客からのひんしゅくの声に耳を貸さないわけにいかない。
「ちょっとやり過ぎか?」
「出入り禁止なんてことにならんだろうな?」
「新聞沙汰になりでもしたら、とんでもないぞ。」
「いやそこまでには、ならんだろうさ。」
「いやいや、客の一人が面白おかしく喋ったら……」
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