人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングで「エンチャンテッド・アイランド 魔法の島」を観る

2012年02月14日 06時55分49秒 | 日記

14日(火).昨日は新聞休刊日だったので,活字中毒にとっては何か物足りない朝でした しかし,休刊日がなければ,毎日,早朝から新聞を配達してくれている人たちが休めません.彼らにとって週休2日なんて夢の話なのです それを思えば,年に数えるほどしかない休刊日くらいは我慢しなければならないと思います.新聞配達の皆さん,毎日ありがとうございます

   閑話休題  

11日(土)に新宿ピカデリーでMETライブビューイング「エンチャンテッド・アイランド 魔法の島」を観ました これは米メトロポリタン歌劇場の新作オペラで、バロックの名曲を抜粋,編曲した曲により物語が展開しますシェイクスピアの「真夏の夜の夢」の4人の恋人たちが「テンペスト」の超自然的な島に難破するという幻想的な物語を、ヘンデル、ラモ―、ヴィヴァルディなどの流麗なメロディに乗せて展開します。指揮はバロック音楽の権威ウィリアム・クリスティ、演出はフェリム・マクダ―モットです。今年1月21日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラの世界初演のライブ映像です

キャストはヒロインのシコラクスにジョイス・ディドナート(メゾ・ソプラノ),その息子キャリバンにルカ・ピザローニ(バスバリトン),シコラクスの宿敵・魔法使いプロスペローにデイビッド・ダニエルズ(カウンター・テナー),その娘ミランダにリゼット・オロペーサ(ソプラノ),その結婚相手フェルディナンドにアンソニー・ロス・コスタンゾ(カウンター・テナー),妖精アリエルにダニエル・ドゥ・ニース(ソプラノ),ネプチューンにプラシド・ドミンゴ(テノール)という面々です

前日に新宿ピカデリーに指定券をとりに行ったのですが,何と4列以降は埋まっていて席がないというのです 仕方なく3列目の左から2番目の席を押さえました(奥の席は嫌なので).オペラの映画でこれほど埋まるものなのか 一瞬疑問に思いました

当日会場に行くと,なるほどかなりの席が埋まっていますが,満員ということではありません.それにしても多いことは確かです

第1幕約100分,第2幕約80分,休憩時間を含めて3時間34分の長時間オペラですが,これほど楽しいオペラも珍しいのではないかと思います

幕間のインタビューで考案・台本のジェレミー・サムズが「シェイクスピアの”テンペスト”と”真夏の夜の夢”を合わせて,バロック音楽を流したら面白いと思って台本を作った オペラに使用する曲については指揮のウイリアム・クリスティーの方が専門家なので相談した.また,歌手にも企画段階からジョイントしてもらい,意見を訊いて選曲した」と言っていました.これについてディドナートは「いくつか提案したうち1曲だけ採用された」と答えていました

舞台は背景が巨大スクリーンになっていて,様々なシーンが映し出され,オペラに奥行きとファンタジーを与えています 舞台と映像の相乗効果なくしてこのオペラの楽しさはなかったのではないかと思います

クリスティはMETオーケストラからまるで古楽器のような音をつむぎ出します インタビューで彼は「METのオケは柔軟性があり適応力があるので,すぐにこちらの意図を汲んで対応してくれる」と答えていました 音楽では特にヴィヴァルディの早いパッセージの曲(ヴァイオリン協奏曲)が,物語に緊張感を与え,ドキドキ・ワクワク感を醸し出していて良かったと思います

歌手ではシコラクス役のディドナートが,前半の老婆の姿から後半には魅力的な女性へと変身をとげ,アリアも若々しく変化させていたのが印象に残っています そういえば昨日の朝日夕刊(休刊日にも夕刊は届きます)に「米グラミー賞の第54回授賞式が12日,ロサンゼルスであり,最優秀クラシック・ソロ・ボーカル賞をディドナートが受賞したという小さな記事が載っていました.彼女のアルバム「Diva Divo」には,仏国立リヨン歌劇場の首席指揮者,大野和士が参加しているとのことです.ブラボー!ディドナート

妖精アリエル役のニースは黒人歌手ですが,何とチャーミングで歌も素晴らしいのでしょうかこのオペラの影のヒロインといっても過言ではありません

シコラクスの息子役のピザローニは,数ヶ月前にMETの「ドン・ジョバンニ」でレポレッルロを歌い好評を博した歌手ですが,今回は顔をピエロのように白く塗って登場,素晴らしいバスバリトンの歌声を聴かせてくれました

デボラ・ボイトがプラシド・ドミンゴにインタビューしたとき「お誕生日おめでとうございます」と言っていました.このオペラの上演日が誕生日だったようです.ドミンゴは1941年生まれですから満71歳の誕生日!ということになります ドミンゴは前回METでグルックのオペラ「アウリスのイフェゲニア」でも歌っていました.今回のオペラでは第1部と第2部で各1回しか出番がないのですが,「もっと歌いたい」と言っていました.生涯現役を貫くつもりでしょうか

このオペラはバロック音楽に乗せて歌詞が英語で歌われますそういうこともあってか,まるで「バロック・ミュージカル」とでも呼ぶべきオペラになっています

(蛇足ですが,上映開始約30分後の10時25分ごろ,ディドナートがアリアを歌っている場面で,床と椅子が振動しました.地震があったようです.映画館にいて地震に遭遇するのは,ある意味恐いものがあります.奇しくもこの日は2.11でした).

今回,METのレパートリーの幅広さと歌手陣の素晴らしさを再認識しました.映画ではありますが,新作オペラの世界初演を観ることができたのは幸せでした

「エンチャンテッド・アイランド」は17日(金)まで,新宿ピカデリーでは午前10時から,東銀座の東劇では午後7時から上映中です.これほど観て聴いて楽しいオペラも珍しいと思います.入場料は3,500円です.本物のオペラを観ると思えば安いものです.お薦めします

 

                      

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