人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

期待の田島千愛~「明日を担う音楽家による特別演奏会」を聴く

2012年02月08日 06時39分08秒 | 日記

8日(水).昨夕,前日に続き初台の東京オペラシティ・コンサートホールで「明日を担う音楽家による特別演奏会」を聴いてきました これは「文化庁芸術家在外研修制度」の対象者の成果を披露するためのコンサートです このチケットを買ったのはソプラノの田島千愛が出演するからです.彼女は新国立劇場の研修生によるモーツアルト「フィガロの結婚」でスザンナを歌い,歌も演技も素晴らしかったので,機会があれば是非聴いてみたいと思っていました

会場は2階以上の左右バルコニー席には客を入れていません.全体の入りは7割位でしょうか.自席は1階10列23番で,前方の右サイド通路側です.歌手の顔も十分見えます 舞台のバック上方に巨大なスクリーンが降ろされています.何か企みがあるのでしょう この日の演奏会ではソプラノ4人,メゾ・ソプラノ2人,テノール3人がオペラのアリアを披露,大勝秀也指揮東京フィルがバックを務めました.コンマスはソロ・コンサートマスターの荒井英治です.東京フィルは手を抜いていません

プログラムの最初はオーケストラのみでヘンデル「エジプトのジューリオ・チェーザレ」序曲が演奏されました 終わるとすぐにソプラノの山口清子がブラウンのタンクトップ,ホワイトのロングスカートで登場し,同曲から「つらい運命に涙はあふれ」を歌いました.スクリーンには海に沈みかける夕日が映し出されました.誠実な歌い方だと思いました

次いで,水色のドレスの鈴木愛美(ソプラノ)と黒のスーツの小林紗季子(メゾ・ソプラノ)がモーツアルト「フィガロの結婚」からスザンナとケルビーノのアリア「早く開けて開けて」を喜劇らしくコケティッシュに歌いました スクリーンには鍵と鍵穴のシルエットが映し出されています.オペラの筋書き通り最後にケルビーノ役の小林が舞台から飛び降りました.これには会場一同びっくり

次いでテノールの土崎譲が登場,モーツアルト「魔笛」からタミーノのアリア「なんて美しいこの絵姿」をロマンチックに歌いました.スクリーンには星空が

歌い終わると,マイクを持って,自分が進行係を務めると自己紹介,次の曲を紹介しました

ドニゼッティ「愛の妙薬」より「優しいそよ風にお聞きなさい」を山口清子とテノールの西村悟が絶妙のコンビで歌いました スクリーンには郊外の広大な風景が映し出されていました.西村は昨年,佐渡裕指揮東京フィルでベートーヴェンの第9のテノールを歌うのを聴いて以来です.背丈もあり,ガッチリした体つきで声量があり,申し分ありません

ここで,弦楽器が増えてフルオーケストラになります.待ちに待った田島千愛の登場です.水色に白の花をあしらったドレスで登場,ドニゼッティ「連隊の娘」より「こうなってしまって私の運命は変わる」を歌いました.スクリーンには城壁の上を流れる雲が映し出されます.前半の哀しみに満ちた曲想と,後半の喜びに満ちた曲想をみごとに歌い分けていました

次いで,深紅のドレスに着替えた鈴木愛美が登場,トマ「ハムレット」より「私も遊びの仲間に入れて下さい」を美しいソプラノで歌い上げました スクリーンは森の中の情景です.

プログラム前半の”トリ”は鳥木弥生の歌うマスネ「ウェルテル」より「手紙の歌”ウェルテル,誰が言えましょう”」です.鳥木は黒を基調にした生地に赤いバラをあしらったドレスで登場しました.彼女は昨年,藤原歌劇のロッシーニ「セヴィリアの理髪師」でゼッタの指揮の下,ロジーナを歌い好評を博しました それが自信になっているのでしょう.堂々たるステージマナーで,歌も落ち着いてメゾの魅力を聴かせてくれました 比較的近くで彼女を見た印象は,思ったよりも背が高く大柄だったということです.スクリーンはろうそくの炎~墓石~一本の立木と変わりました.

休憩後,最初はヴェルディ「ナブッコ」より「かつては私の心も喜びに満ちていた」を歌うソプラノの廣田美穂です.彼女が登場したとき,”この体格なら十分声量も期待できるな”と思いましたが,その通り力強い歌声を聴かせてくれました スクリーンはエジプトの宮殿でした.

次いで,西村悟が登場しヴェルディ「仮面舞踏会」より「永遠に君を失えば」を堂々たるテノールで歌いあげました スクリーンは郊外の荒地で,あとから仮面が現れました.

ここで,司会役の土崎がマイクを持って登場,指揮者の大勝秀也にインタビューします.

土崎:マエストロはドイツで長い間ご活躍されていたと聞いていますが,ご苦労されたエピソードがあったらご紹介ください.

大勝:最初はドイツ語がまったくだめで苦労しました.ある日,肉屋に行って豚骨が売っていたので買ってきて豚骨ラーメンを作って食べました.これはうまかった.1年ぐらいたって,ドイツ語が分かるようになってから,同じ肉屋に行ってみたら,豚骨が売っていました.そこに何か書かれていたのでよく見ると「お宅のワンちゃんにどうぞ」と書かれていました(会場一同爆笑

気を取り直して,次は同じくヴェルディの「アイーダ」より「戦い敗れた国のお前の苦しみは」を廣田美穂と鳥木弥生が歌いました この日の白眉です二人とも貫禄があり,声量があるので,よく声が通ります.スクリーンはエジプトの宮殿の内部です.

次はプッチーニ「ラ・ボエーム」よりデュエット「おお,優しい乙女よ」です.パープルのドレスに着替えた田島千愛とテノールの高田正人がカルチェ・ラタンのミミとルドルフォをロマンチックに表情豊かに歌い上げます スクリーンは部屋から見たパリの空です.

次いでチレア「アドリアーナ・ルクヴルール」より「苦い喜び,甘い責め苦」をブルーのドレスに着替えた小林紗季子が切々と歌います スクリーンはミシャの描いた女性の絵です.

最後は高田正人によるプッチーニ「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」です.一見,昭和歌謡の大御所・東海林太郎を彷彿とさせる顔立ち(失礼!)です.テノールならこの歌を歌いたいと思うでしょう.高田は素晴らしい歌唱力で歌い上げました スクリーンは夜明けの大きな月です

最後に全員が再登場して,青い空を映し出したスクリーンを背景に,ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ」より「乾杯の歌」を歌いました 期待の田島千愛はドニゼッティもプッチーニもとても良かったのですが,この人はモーツアルトの方が”合っている”ような気がします いずれにしても,この日出演した歌手たちはこれからの日本のオペラ界を牽引する優秀な人たちです.じっくり見守っていきたいと思います

 

 

          

 

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