5日(金).わが家に来てから677日目を迎え,仲間たちと第3次安倍内閣の布陣について議論しているモコタロです
新内閣の顔ぶれはど~よ? 内角を攻めた方がいいって?
閑話休題
昨夕,サントリーホールで東京交響楽団の第643回定期演奏会を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」,②ポポーフ「交響曲第1番」(日本初演)です
①のピアノ独奏はオルガ・シェプス,指揮は飯森範親です
オケはいつもの東響の編成で,左サイドにヴァイオリン・セクションを集め,右サイドに中低音のチェロ,ヴィオラ,コントラバスを配置します コンマスはグレヴ・二キティンです
1曲目のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」でピアノを独奏するオルガ・シェプスはモスクワ生まれ,後にドイツに移住,ソニークラシカル専属ピアニストとして活躍しています 私は2015年1月の日経ミューズサロンで彼女のピアノ・リサイタルを聴いているので,今回が2度目となります
ファッション誌の表紙から抜け出したようなオルガ・シェプスが真っ赤なステージ衣装で颯爽と登場します 飯森の指揮で第1楽章「モデラート」が開始されます.冒頭の和音の連打はラフマニノフが幼少のころ耳にしたロシア正教会の鐘の響きです
それに続いてロマンティシズムの極致とも言うべき有名なメロディーが奏でられます
第2楽章「アダージョ・ソステヌート」を経て第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」に移りますが,シェプスのロマンに満ちた演奏が冴えわたります
日経ミューズサロンの時はショパン中心のプログラムでしたが,何となく引っ掛かりを感じました しかし,今回のラフマニノフは水を得た魚のように生き生きと演奏していました
会場いっぱいの拍手に,シェプスはエリック・サティの「3つのジムノぺディ」から第1番をしみじみと演奏,聴衆のクールダウンを図りました それでも鳴り止まない拍手に,一転して激しい曲,プロコフィエフ「ピアノ・ソナタ第7番」から第3楽章を,怒涛の如く演奏,聴衆を再びヒートアップしました
休憩後はガヴリイル・ポポーフの交響曲第1番です ポポーフ(1904-72)はショスタコーヴィチと同時代を生きたソ連の作曲家で,「交響曲第1番」は1935年にレニングラードで初演された際に,スターリン政権下の政府当局から批判を受け,演奏禁止になった作品です
今回は日本初演となります
ステージに所狭しと詰めかけた演奏者を見渡すと,軽く100人を超えています とくに管楽器群は通常2列で並びますが,4列に配置されており,作曲者の楽器指定によるとホルンは8本となっていますが,数えてみると2倍の16人います.同じくトロンボーンは3本のところ6人います.飯森範親はこの曲の初演に当たり,金管楽器の力強いトーンを重視したようです
この曲は1時間近くも要する大交響曲ですが,4楽章ではなく3つの楽章から成ります 第1楽章冒頭は管楽器と打楽器による大きな爆発で始まります
その後,目先がくるくると変わり,先の読めない曲想が展開します
同じ時代にソ連で活躍したショスタコーヴィチとはまったく曲想が異なります.強いて言えば映像が頻繁に変わる映画音楽を聴いているような感じです
例えば,ショスタコーヴィチの曲を聴くと,いかにもショスタコーヴィチらしい曲想というものを感じます モーツアルトの曲を聴くとモーツアルトらしい曲想を感じるのと同じように.言わば「ショスタコーヴィチのDNA」「モーツアルトのDNA」というものを聴きとることが出来ます
その意味では,このポポーフの音楽のDNAを見い出すのは極めて困難です
もちろん,この曲は日本初演で,初めて聴く曲であり,ポポーフの他の曲(全部で117曲 作曲した)を聴いたわけでもないので,ポポーフならではの特徴=DNAを把握することは困難であることはムリのないことです
第2楽章「ラルゴ・コン・モート・エ・モルト・カンタービレ」では荒絵理子のオーボエ,甲藤さちのフルートが抒情的に奏でられます.グレヴ・二キティンのヴァイオリン・ソロも美しく響きます
第3楽章「フィナーレ:スケルツォ・エ・コーダ プレスティッシモ」に入ると,打楽器群が俄然活躍します この楽章は力強く,ポポーフの作曲家としての”野心”を感じます
飯森範親のタクトが下されると拍手とブラボーの嵐がステージを取り囲みましたが,この曲は1度聴いただけでは,その本当の価値が分からないというのが正直な感想です
ちょうど,ホール入口で配布された1kgもありそうなコンサートのチラシの束の中に,「オーケストラ・ダヴァーイ」というアマチュア・オーケストラが8月28日(日)にすみだトリフォニーホールでこの曲を演奏するというチラシが入っていました.興味のある方はトリフォニーホール・チケットセンター(03-5608-1212)まで問い合わせてください