29日(月).わが家に来てから701日目を迎え,またしても不法侵入者を告発するモコタロです
キミはいったい何者だ? 髪の毛が長くて音楽家のようだけど・・・・
なんだ モーツアルトさんか 早く言ってくれればいいのに 深刻な顔しちゃってさ
閑話休題
昨日,池袋の新文芸坐で映画「アイヒマンショー」を観ました これはポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督による2015年イギリス映画(96分)です
ナチス・ドイツによるホロコーストの実態を全世界に伝えるために奔走したテレビマンたちの実話を映画化した作品です
1961年,元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判がイスラエルで行われようとしていた ナチスによるユダヤ人に対する蛮行の数々はどういうものだったのか,法廷で生存者たちから語られる証言は,ホロコーストの実態を明らかにする絶好のチャンスだった
テレビプロデューサーのミルトン・フルックマンとドキュメンタリー監督レオ・フルビッツは,真実を世界に知らせるために,この裁判を撮影し,その映像を世界へ届けるという一大プロジェクトを計画し,実行する
イスラエル当局の撮影許可を得るため,彼らは,法廷内にカメラを置くのでなく,法廷となる会場の壁に穴をあけ,まるでマジックミラーのような仕掛けによって壁の外側から法廷の模様を撮影するという賭けに出ます これが当局に認められ,本番を迎えます
プロデューサーのミルトンの元には撮影を中止するように主張するナチの残党からの手紙や電話が届きますが,彼はそれを乗り越えて放送を続けます
一方,監督のレオは「アイヒマンは冷血だが,普通の感情を持った”普通の人間”に過ぎない.一定の条件下に置かれれば誰もがアイヒマンに成り得る」ということを,アイヒマンの表情を通して訴えたいと考え,執拗にアイヒマンの顔を映し出し,彼が感情を表に出すのを待ちます
最後にアイヒマンは,(ユダヤ人虐殺の)手を下したのは自分ではないが,命令したのは自分であることを認め,顔を歪めます
これこそレオが取りたかったアイヒマンの表情でした
この法廷を傍聴していた一人に,先日映画で観たドイツの哲学者ハンナ・アーレントがいました この映画では出てきませんが,彼女こそ「アイヒマンは上官の命令に従って業務を遂行しただけだった.彼の『思考する能力の欠如』が悲劇を招いた」と喝破した人でした
つまり,哲学者ハンナ・アーレントも監督レオも「アイヒマンは特別な存在ではなく,普通の感情を持った人間であり,誰もが一定の条件下に置かれたらアイヒマンに成り得る」と考えていたのです
さて,21世紀の現代,世界を見渡すと どこにもアイヒマンはいるような気がします