24日(水).わが家に来てから696日目を迎え,リオ・オリンピックの次のテーマを探して室内をパトロールするモコタロです
オリンピックもアッという間に終わってしまった 次どうしよう・・・
閑話休題
昨夕,サントリーホールで読売日響の第561回定期演奏会を聴きました オール・リヒャルト・シュトラウス・プログラムで①交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」,②4つの最後の歌,③家庭交響曲です
②のソプラノ独唱はエルザ・ファン・デン・へーヴァ―,指揮はセバスチャン・ヴァイグレです
オケは通常の読響の態勢で,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです コンミスは日下紗矢子です.応援団長の学ランのように丈の長い黒の衣装を身に付けたヴァイグルが颯爽と登場します
かなりガッチリした体格で,思ったよりも若い指揮者です
2008年からフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務めています
1曲目の交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の演奏に入ります ティル・オイレンシュピーゲルというのは中世ドイツにいたとされる道化で,庶民から人気があったいたずら者です
曲は冒頭「むかしむかしあるところにティル・オイレンシュピーゲルという愉快な道化があったとさ
」という弦楽器の語り掛けで始まります.そしてホルンとクラリネットによりティルのテーマが奏でられます
ホルン独奏は今年1月から首席ホルン奏者に就任した松坂隼です.リヒャルト・シュトラウスと言えば,父親がホルン奏者ということもあって,どの曲もホルンが大活躍します.したがって,この日のコンサートは松坂氏の独壇場(本人から見れば地獄)です
フルートが抜群に上手いのですが,見慣れない外人奏者です.多分ヴァイグレが連れて来たのでしょう
クラリネット(第2)の女性が新日本フィルの澤村康江さんによく似ています.そういえば4月以降,新日本フィルのコンサートで彼女の姿を見かけません.どうなっているのでしょうか
この曲を初めて生演奏で聴いたのは,今からン十年前,昭和女子大学人見記念講堂で,ヘルベルト・ブロムシュテットがドレスデン国立歌劇場管弦楽団を振って演奏した時です あの時,場内アナウンスが「ヨハン・シュトラウスの『ティル~』」と告げ,首を傾げていると,「失礼しました.リヒャルト・シュトラウスの~」と訂正したのを思い出しました
この日の読響の演奏はヴァイオリン・セクションが美しくも力強い演奏を展開していました もちろん,ホルンを中心に金管楽器の活躍は言うまでもありません
次いで,「4つの最後の歌」に入ります 南アフリカ・ヨハネスブルク生まれのソプラノ歌手,エルザ・ファン・デン・へーヴァ―が指揮者とともに登場します
大柄で体格のよい女性です
2008年から13年までフランクフルト歌劇場に所属していたということなので,ヴァイグレが声を掛けたのでしょう
4つの歌は,ヘルマン・ヘッセの「春」「9月」「床に就く前に」と,ドイツの詩人アイヒェンドルフによる「夕映えに包まれて」をテキストにしています
全体として,人生の歩みを歌っているかのような内容です
へーヴァーは恵まれた体格を生かして,申し分のない声量で最初の「春」を歌い上げます ちょっと高音部が耳につく感じがしましたが,すぐに慣れました
「床に就く前に」と「夕映えに包まれて」ではコンミスの日下紗矢子のヴァイオリン独奏がありましたが,素晴らしい演奏で,作曲者の「辞世の句」のように聴こえました
休憩後は「家庭交響曲」です 交響曲なので第1楽章から第4楽章まであるのですが,各楽章は切れ目なく演奏されるので,はっきり言って交響曲の名前を借りた交響詩です
この曲は,作曲者と妻と息子の日常生活を描いています
第1楽章では夫,妻,息子が音楽で提示され,第2楽章では両親の幸せや息子と遊ぶ情景が,第3楽章では夫婦の愛の情景,第4楽章では家族の目覚め,息子の教育方針を巡る夫婦の言い争い,その解決が描かれ,最後はメデタシメデタシで終わります
リヒャルト・シュトラウスは「自分に作曲できないものは何もない.どんなものでも音楽にして見せる」と豪語していた作曲家です
あるテーマがあると,それにメロディーを付け,大管弦楽で厚化粧を施します
演奏が素晴らしければ素晴らしいほど,リヒャルト・シュトラウスの作品の「針小棒大」「誇大妄想」的な嫌らしさがクローズアップされて,嫌気が指してくるのです その意味では,この日の読響の演奏は総力を結集した熱演で,「誇大妄想」の極致をいく演奏でした
作曲者の描くストーリーを無視して,純粋な管弦楽曲として聴いたならこれほど素晴らしい演奏もないでしょう
聴衆の個々人が演奏をどういう風に捉えたかは不明ですが,終演後は拍手とブラボーの嵐でした
私は,曲に対してではなく,演奏に対して大きな拍手を送りました
この曲を聴くにあたって,CDを持っていたら予習しようと思いました まさか好きでもない「家庭交響曲」のCDは持っていないよな,と思いながらCDラックの「リヒャルト・シュトラウス」コーナーを探したら,出てきました
ネーメ・ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル・オーケストラによる演奏(1987年)です
まったく聴かないで本番に臨むよりもマシだと思い,1度だけ聴きました.それで充分です