人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングでヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」を観る~アンナ・ネトレプコ、ディミトリ・ホヴォロストフスキー、ドローラ・ザジック、ヨンフン・リーにブラボーの嵐!

2018年09月16日 07時25分32秒 | 日記

16日(日)。わが家に来てから今日で1445日目を迎え、2016年の米大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告が14日、大統領選介入をめぐるロシア疑惑を捜査するマラー特別検察官と司法取引で捜査協力することで合意した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       トランプは次々と外堀を埋められていく  この辺で誰か内堀を埋めてくれないかな

 

         

 

昨夕、東銀座の東劇で「METライブビューイング  アンコール2018」のヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」を観ました これは2015年10月3日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です キャストは、レオノーラ=アンナ・ネトレプコ、ルーナ伯爵=ディミトリ・ホヴォロストフスキー、アズチェーナ=ドローラ・ザジック、マンリーコ=ヨンフン・リー、フェルランド=ステファン・コツァン、管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・同合唱団、指揮=マルコ・アルミリアート、演出=デイヴィッド・マクヴィカーです 

「トロヴァトーレ」とは中世の吟遊詩人のことです。このオペラではマンリーコが吟遊詩人となっています

 

     

 

舞台は15世紀のスペイン。ルーナ伯爵の陣営で警備隊長のフェルランドが昔語りをする。先代の伯爵に2人の息子がいたが、弟君はジプシーの老婆に呪いをかけられたとされ、老婆は火あぶりとなり弟君は行方不明になったという 夜、城内の庭で 暗闇の中、女官のレオノーラが恋人の吟遊詩人マンリーコと間違ってルーナ伯爵に抱きついてしまい、レオノーラを愛する二人は決闘となる(以上第1幕)。

ジプシーの野営地。アズチェーナは息子のマンリーコに、自分の母が火あぶりにされた様子を語る。アズチェーナが母親の復讐のため弟君を火に投げ入れたつもりが、誤って自分の息子を殺したと聞いて、マンリーコは自分はいったい何者かと出生に疑問を抱く そこにレオノーラが修道院に入るという知らせがもたらされる。駆けつけたマンリーコは先にレオノーラを略奪しようとしたルーナ伯爵から彼女を救い出す(以上第2幕)。

ルーナ伯爵の陣営にアズチェーナが捕らえられてくる。彼女がマンリーコの母親と知ったルーナ伯爵は復讐を誓う 一方、マンリーコの陣営では、レオノーラとの結婚が準備されている最中に、アズチェーナが捕らえられたとの知らせがもたらされる。マンリーコは彼女を救出するため出陣する(以上第3幕)。

マンリーコはルーナ伯爵との戦いに敗れ、アズチェーナとともに塔に囚われている 一方、レオノーラはルーナ伯爵に身を任せる代わりにマンリーコの助命を嘆願する。牢に現れたレオノーラはマンリーコを逃そうとするが、先に飲んでいた毒がまわり息絶える それを知ったルーナ伯爵は激高しマンリーコを処刑する。アズチェーナはルーナ伯爵に「彼こそ行方不明のお前の弟だ」と告げ、「母さん 復讐は遂げられた」と勝利を宣言する。ルーナ伯爵は「それでも俺は生きていくのか」と嘆息し幕を閉じる(以上第4幕)。

 

     

 

幕が開く前にMET総裁のピーター・ゲルブ氏が登場、バリトンのホヴォロストフスキーが脳卒中からまだ回復し切っていないにもかかわらず今回の公演に出演している旨を語りました 幕間のインタビューでホヴォロストフスキーは「もうすぐ全快するからね」と笑顔で挨拶していましたが、残念ながら同氏はこの公演の約2年後、2017年11月22日に死去しました 享年55歳の若さでした。2011年のMETオペラ来日公演では、主役級の歌手の何人かが福島の原発事故の影響を恐れ来日を断念する中、ホヴォロストフスキーは来日し ヴェルディ「ドン・カルロ」のロドリーゴを歌ってくれました 艶のあるバリトンとカッコいい雄姿が忘れられません

東劇のロビーの壁に彼の追悼コーナーがあって、主だったオペラの写真が掲示されていました

 

     

     

 

アルミリアートのタクトで第1幕が開きます。最初にフェルランドが登場してルーナ伯爵家の昔語りを歌いますが、バスのステファン・コツァンが素晴らしい 第一に面構えがいいし、歌唱力も言うことなしです この公演は脇役にも一流を揃えていることが分かります そして、マンリーコ役のヨンフン・リー、レオノーラ役のアンナ・ネトレプコ、ルーナ伯爵役のディミトリ・ホヴォロストフスキーの登場となりますが、この3人が3人とも存在感が半端ないのです

レオノーラを歌ったアンナ・ネトレプコはロシア生まれのソプラノですが、この時すでにMETを代表する大スターになっています 第1幕の「穏やかな夜」、第4幕の「恋はバラ色の翼にのって」をはじめとして、それぞれの幕で歌われるマンリーコ、ルーナ伯爵との二重唱、三重唱など、ドラマティックながら繊細な歌唱によって深い感動を呼び起こします 「演技力」とよく言われますが、彼女の場合は歌そのものが演技になっています 個人的には、彼女こそ現在における最高のソプラノ歌手だと思います

2011年のMETオペラ来日公演でネトレプコも来日し プッチーニ「ラ・ボエーム」のミミを歌う予定でしたが、東日本大震災後の福島の原発事故の影響で来日を断念しました   当時 彼女は生まれたばかりの乳児を抱えていたので、子どもへの影響を考えて断念したのだと思います   高いチケットを買っていた私としては残念至極でしたが仕方ありません その後成長した その息子は、幕間のインタビューで母親にまとわりついて、「ママ、早く歌って!」と甘えていました インタビュアーのスーザン・グラハムは「早く歌ってもらって、お家に帰りたいのよね~ 子どもとペットは可愛いものよね」とコメントしていましたが、場内は大爆笑でした

ヨンフン・リーは韓国出身のテノールですが、MET5年目ということで売り出し中の歌手です 第3幕で歌われる「見よ恐ろしき炎」におけるハイCは聴きものでした

ジプシーの老婆アズチェーナを歌ったドローラ・ザジックは、METのデビュー25周年とのことですが、デビューの役がアズチェーナだったそうです それだけに、この役は彼女の当たり役になっており、存在感が抜群です

そして、ルーナ伯爵を歌ったドミトリ・ホヴォロストフスキーはロシア出身のバリトン歌手ですが、銀髪で甘いマスクなのでカッコいいこと限りないのです 第1幕で登場するや、満場の拍手が鳴りやまず、オーケストラが途中で演奏を諦めて、拍手が止んでから演奏し直しました 第2幕第2場の「君の微笑み」をはじめ、深みのあるバリトンが腹の底にズッシリと響きます

この作品では合唱が重要な役割を果たしますが、メトロポリタン歌劇場合唱団は第2幕の「アンヴィル・コーラス」(鍛冶屋の合唱)をはじめとして、演出の素晴らしさと相まって、迫力ある合唱で聴衆の熱狂を呼び起こします

マクヴィカーの演出は、回り舞台を有効に使って、無駄のない速いテンポで舞台転換が行われ、弛緩することろがまったくありませんでした アルミリアートはピッタリと歌手に寄り添い、歌いやすい環境を整えていました

「イル・トロヴァトーレ」は、少なくともマンリーコ、ルーナ伯爵、レオノーラ、アズチェーナの4役(フェルランドを加えれば5役)について主役級の歌手を揃えなければならないので、なかなか上演される機会がありません その点、この公演は最高レベルの歌手陣による最高のパフォーマンスだったと言えるでしょう

カーテンコールが繰り返されましたが、ホヴォロストフスキーが一歩前に出ると 多くの白いバラがステージに投げ込まれました   彼は1本1本拾い上げ4,5本の束にして女性歌手たちに手渡していました 2年後にはこの世にいないホヴォロストフスキーの優しい振る舞いを見て 思わず涙がにじみました しかし 亡きあとも、ホヴォロストフスキーはライブビューイングの中で生きています

コメント
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