人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

松田青子著「女が死ぬ」を読む ~ 女性の視点で男性中心社会を揶揄した作品が印象的 / 今週は6回コンサート

2022年03月21日 07時01分28秒 | 日記

21日(月)。昨日 都内で桜の開花宣言が出ました 昨年より早いそうです。ウクライナに早く春よ来い

今週は火曜日を除いて毎日コンサートです 幸い6回のうち夜の公演が2回のみなのでまだマシです それでも腰痛持ちにはつらい毎日に違いありません これまでのようにコルセット着用で乗り切りたいと思います

ということで、わが家に来てから今日で2627日目を迎え、韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮が20日午前、ロケット砲とみられるものを4発発射した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     バイデン米大統領の目が ウクライナに集中して 相手にしてくれないから焦ってる

 

         

 

松田青子著「女が死ぬ」(中公文庫)を読み終わりました 松田青子(まつだ  あおこ)は1979年兵庫県生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業。2013年、デビュー作「スタッキング可能」が三島由紀夫賞及び野間文芸新人賞候補になる。2019年に短編「女が死ぬ」がアメリカのジャーリイ・ジャクスン賞短編部門の候補となり、21年に「おばちゃんたちがいるところ」がレイ・ブラッドベリ賞の候補となった 「おばちゃんたちがいるところ」は当ブログでご紹介しました

 

     

 

本書は「ワイルドフラワーの見えない1年」(2016年8月刊・河出書房新社)から「女が死ぬ」に改題したものです 標題となった「女が死ぬ」をはじめ全部で53篇の物語が収録されていますが、15ページの長編?「女が死ぬ」から、タイトルの「水蒸気よ永遠なれ」だけで白紙のままの作品まで、変化に富んでいます 巻末に「著者ひと言解説」が掲載されていて、著者がそれぞれの短編を書いた動機などを告白しています

その中で一番印象に残ったのは「あなたの好きな少女が嫌い」です こんな風に始まります

「あなたの好きな少女が嫌いだ。あなたの好きな少女は細くて、可憐で、はかなげだ。間違っても、がははと笑ったりはしない    がははと笑うような少女をあなたは軽蔑している。というか、それはもうあなたにとっては少女ではない     では、がははと笑う少女はどこに行けばいいのか

そして、あなたの好きな少女は「弱くて、非力で、不器用で~」「我がままで、自由で、子猫のように移り気で~」「センスが良くて、前途有望で、いろいろ教えがいがあり~」と続きます そして、「それがあなたにとっての正統派の少女であり、それ以外の少女はあなたの目には映らない」とし、反撃に出ます 「わたしは、イスにお行儀よく座ったあなたの好きな少女に鼻眼鏡をかけさせる。貧弱な体を強調するような、ミニスカートとレースのブラウスを脱がせ、頑丈なオーバーオールを着せてみる・・・・あなたがあなたの好きな少女にがっかりすればいいと思いながら」と続けます

この一編を読んだ時、「著者は男性が女性に対して抱いている固定観念に対する怒りを表現しているな」と思いました 「そんな女性はどこにもいないよ 女性に一方的な理想像を押し付けておいて、男である自分はどうなんだ。鏡を見てからものを言え」というような

これに似たような作品が「この国で一番清らかな女」です 物語は・・・この世で一番清らかな女と結婚したいと思う王子がいた。科学技術者に、一度でも性的に触れられた場所が発光して見える特別な眼鏡を作ってもらった それにより、王子はどこも光っていない美しい娘と結婚した しかし、王子が彼女の身体に触れようとするとパンチを浴びせられて拒否される 事情を聞くと、娘の両親は世の中の恐ろしい事件に胸を痛め、娘に幼い頃から武道を習わせ、「触れられる前に殴れ」と教えていたのだった 王子は娘が慣れてくれるのを待つことにしたが、今のところ王子は毎日ボコボコだ・・・という話です

この話は男性が女性に一方的に理想を抱いて何とか結婚したものの、結局、自分の思い通りにはいかないことを描いています どんなに相手に理想像を求めても、相手も生身の人間。自分勝手な妄想はやめた方がいい、と言わんとしているように思えます   逆もまた真なりですが

男性対女性という観点で書かれた作品で注目すべきなのは「男性ならではの感性」です 物語は・・・男性ライターが男性ならではの感性で提案した男性向けの新商品は、世間に驚きをもって迎えられた 男性ならでは感性で開発された商品だとネットや雑誌などでも次々と紹介され、まずまずどころではない売り上げを記録したのである・・・・男性ライターは『男性自身』『週刊男性』『男性セブン』『紳士公論』といった男性誌で連載を持ち、好評を博した・・・男性の時代が訪れていた。男性にも選挙権をと男たちが戦ったのははるか彼方のことだ 政府も国をあげて男性の活躍を支援してくれていた・・・というストーリーです

つまり、この作品は男性と女性が置かれている現在の立場を逆転させて、いまだに改善されていない男性中心社会を揶揄している作品となっているのです ここにも著者の怒りを感じます

また、この本には「ナショナルアンセムの恋わずらい」「ナショナルアンセム、間違う」「ナショナルアンセム、ニューヨークへ行く」という同じ主人公が登場する3つの作品があります ナショナルアンセムとは国歌のことです。著者は「君が代」とは書いていませんが、それを意味しているのは明らかです 「ナショナルアンセムの恋わずらい」では、入学式で歌ってくれない少年に対して、「ぼくがどんな歌だったら、きみはぼくのことを歌ってくれるんだろう ぼくの何がいけないんだろう。歌詞が意味不明? 時代遅れでダサい? それとも何か別の理由? ぼくが流行のヒップホップだったら、きみは歌ってくれたんだろうか。ぼくは片思いをしている。片思いはさみしかった」と「君が代」の気持ちを代弁しています これを読むと、著者は君が代に特別の思いを抱いているのだろうか、と思ってしまいます

標題になっている「女が死ぬ」は「女が死ぬ。プロットを転換させるために死ぬ。話を展開させるために死ぬ。カタルシスを生むために死ぬ。それしか思いつかなかったから死ぬ。ほかにアイデアがなかったから死ぬ。というか、思いつきうる最高のアイデアとして、女が死ぬ」と始まります そして「彼が悲しむために死ぬ。彼が苦しむために死ぬ・・・・」と続いていきますが、最後の1行が効いています それは読んでのお楽しみです


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