お兄さん猫のクーを待ち続けることに耐えられなくなったルーは、探しに行くことを決心します。
そうと決めたら明日に備えてゆっくり寝ようと、丸くなったときにまるで天から降ってきたかのように、ルーのすぐ側にタビが現れました。タビは不思議な力をもった猫です。真っ白い身体に4本の足下とシッポの先だけが、まるで足袋を履いているようにグレーの毛が生えています。
タビはルーの気持ちを察するように、やさしい口調で問いかけました。
「クーを探しにいくつもりかい?」
「うん、もういなくなって1週間になるんだ。もし、どこかでケガでもして動けなくなっているようだったら助けてあげないと…」
タビはそんなルーの言葉を聴くと、ちょっと考えてから言いました。
「クーに会わせてあげようか?」
タビが不思議な力を持っていることは知っていましたが、クーの居場所まで知っているとは思っていなかったので、びっくりして尋ねました。
「えっ、タビさん、クー兄さんがどこに行ったのか知っているの?」
やや半信半疑のルーに向かって、タビは深くやさしい口調で語りかけます。
「うん、会わせてあげるからゆっくり目を閉じてごらん」
ルーはタビに言われるまま、ゆっくり目を閉じました。
そんなルーの頭に、タビはやさしく右の前足を当てて「あおーん」と一声。
すると、ルーの目の前に見たことのない家の中の様子が広がってきました。
不思議に思いながらも、そのまま目を閉じているとふわふわのソファの上で丸くなって寝ているクーの姿が見えました。
「あっ、クー兄さん!」
思わず声に出しました。クーは一瞬、顔を上げたようにも見えましたが、聞こえていないようです。
そうです。クーは拾われていたのです。
飼い主さんはとってもやさしそう。
クーを愛おしそうにやさしくなでています。クーは寛いでいますが、その様子はどこか寂しげです。クーもルーのことが、とても気になっているのです。
マンションの1室から外にでない生活。もう2度とルーに会うことはできません。
「ルーは気弱でおとなしいからな。ちゃんと地域で暮らしていけるだろうか…」
そんな思いが頭から離れず、何度か脱走を試みましたが失敗しています。
その姿を見たルーは、決心したかのように涙を溜めた瞳をゆっくりと開きました。
飼い主さんが寝静まったある夜、クーはルーを心配して寝付けないでいると、どこからともなくタビが現れました。
「タビさん、どうしたの? どこから入ってきたの?」
びっくりするクーに、タビは「しーっ」と声を潜めるように促します。
そして、やさしい口調で話し出しました。
「ルーからの伝言だよ。『僕は大丈夫だから心配しないでね。クー兄さんは、せっかくやさしい飼い主にめぐり合えたんだから、末永くかわいがってもらってね』だって」
それを聴いて、クーは堰を切ったように尋ねました。
「ルーは元気にしてる? 一人でちゃんとごはんを食べてる?」
「大丈夫、心配しないで。僕もついてるから安心していいよ」
「ありがとうタビさん、ルーをよろしく…」
後は言葉になりませんでした。
タビは、そんなルーの額を愛おしそうにやさしくペロッと一舐めすると、静かに去っていきました。
12月に入り、クーの住む家にも小さなクリスマスツリーが飾られました。クーは飼い主さんの膝の上で、きらきら光るクリスマスツリーを見つめながらルーの幸せを祈ります。
ルーの住む街では、家や店で工夫を凝らしたイルミネーションが瞬いています。ルーは、賑やかな街の片隅で、華やかなイルミネーションを見つめながらクーの幸せを祈ります。
2匹は、その後も2度と会うことはありませんでした。でも、クーはルーを、ルーはクーを忘れることなく、お祖父さん猫になってもお互いの幸せを祈り続けていました。
作者たっちーから:親、子ども、兄弟姉妹、仲良しだった友達、大好きだった恋人…。別れは出会いの数だけあります。でも、どんな別れであっても別れた後に、その人の幸せを祈ることができれば、きっといいことが待っているような気がします。
そうと決めたら明日に備えてゆっくり寝ようと、丸くなったときにまるで天から降ってきたかのように、ルーのすぐ側にタビが現れました。タビは不思議な力をもった猫です。真っ白い身体に4本の足下とシッポの先だけが、まるで足袋を履いているようにグレーの毛が生えています。
タビはルーの気持ちを察するように、やさしい口調で問いかけました。
「クーを探しにいくつもりかい?」
「うん、もういなくなって1週間になるんだ。もし、どこかでケガでもして動けなくなっているようだったら助けてあげないと…」
タビはそんなルーの言葉を聴くと、ちょっと考えてから言いました。
「クーに会わせてあげようか?」
タビが不思議な力を持っていることは知っていましたが、クーの居場所まで知っているとは思っていなかったので、びっくりして尋ねました。
「えっ、タビさん、クー兄さんがどこに行ったのか知っているの?」
やや半信半疑のルーに向かって、タビは深くやさしい口調で語りかけます。
「うん、会わせてあげるからゆっくり目を閉じてごらん」
ルーはタビに言われるまま、ゆっくり目を閉じました。
そんなルーの頭に、タビはやさしく右の前足を当てて「あおーん」と一声。
すると、ルーの目の前に見たことのない家の中の様子が広がってきました。
不思議に思いながらも、そのまま目を閉じているとふわふわのソファの上で丸くなって寝ているクーの姿が見えました。
「あっ、クー兄さん!」
思わず声に出しました。クーは一瞬、顔を上げたようにも見えましたが、聞こえていないようです。
そうです。クーは拾われていたのです。
飼い主さんはとってもやさしそう。
クーを愛おしそうにやさしくなでています。クーは寛いでいますが、その様子はどこか寂しげです。クーもルーのことが、とても気になっているのです。
マンションの1室から外にでない生活。もう2度とルーに会うことはできません。
「ルーは気弱でおとなしいからな。ちゃんと地域で暮らしていけるだろうか…」
そんな思いが頭から離れず、何度か脱走を試みましたが失敗しています。
その姿を見たルーは、決心したかのように涙を溜めた瞳をゆっくりと開きました。
飼い主さんが寝静まったある夜、クーはルーを心配して寝付けないでいると、どこからともなくタビが現れました。
「タビさん、どうしたの? どこから入ってきたの?」
びっくりするクーに、タビは「しーっ」と声を潜めるように促します。
そして、やさしい口調で話し出しました。
「ルーからの伝言だよ。『僕は大丈夫だから心配しないでね。クー兄さんは、せっかくやさしい飼い主にめぐり合えたんだから、末永くかわいがってもらってね』だって」
それを聴いて、クーは堰を切ったように尋ねました。
「ルーは元気にしてる? 一人でちゃんとごはんを食べてる?」
「大丈夫、心配しないで。僕もついてるから安心していいよ」
「ありがとうタビさん、ルーをよろしく…」
後は言葉になりませんでした。
タビは、そんなルーの額を愛おしそうにやさしくペロッと一舐めすると、静かに去っていきました。
12月に入り、クーの住む家にも小さなクリスマスツリーが飾られました。クーは飼い主さんの膝の上で、きらきら光るクリスマスツリーを見つめながらルーの幸せを祈ります。
ルーの住む街では、家や店で工夫を凝らしたイルミネーションが瞬いています。ルーは、賑やかな街の片隅で、華やかなイルミネーションを見つめながらクーの幸せを祈ります。
2匹は、その後も2度と会うことはありませんでした。でも、クーはルーを、ルーはクーを忘れることなく、お祖父さん猫になってもお互いの幸せを祈り続けていました。
作者たっちーから:親、子ども、兄弟姉妹、仲良しだった友達、大好きだった恋人…。別れは出会いの数だけあります。でも、どんな別れであっても別れた後に、その人の幸せを祈ることができれば、きっといいことが待っているような気がします。
うちのにゃんこを連れてくる時、近くに兄弟猫がいないか探してもらったのを思い出しました。
結局探しきれなくて、一匹だけ連れてきたのですが…。
兄弟たち、どこかで幸せに暮らしてるといいなあ。
初めから読ませていただいて、やっと2007年に入りました!
追いつく頃には今年が終わっちゃいそうですが、楽しく追いかけます。
私もちょっと泣いてしまいました~
クーとルー。ケンカしなかったら一緒に拾われたのかなぁ…
もしかしたらはっちにもケンカした兄妹がいたのかなぁ…
はっちは一生懸命幸せにするから、今からでもその子の幸せを祈ってあげたいです♪
初めから読んでいただいているんですか!
ありがとうございます。
兄弟を猫を探すなんて…さくさんってやさしいんですね。
12月に入ってだいぶ寒くなってきましたから、
読んでいただいて心だけでも暖かくなって
いただいたならうれしいです!
◎rinkoさんへ
そうですよねぇ。迷い猫のはっちゃんにも
きっとどこかにお母さんや兄弟がいるんですよね。
思う存分、おてんばを発揮できるはっちゃんは、
今、間違いなく幸せいっぱいですよ!