千社札貼巡礼図小柄 古川常珍
千社札貼巡礼図小柄 銘 古川常珍(花押)
千社札を貼る旅の巡礼であろうか、江戸時代の風俗を知ることの出来る貴重な資料でもある。千社札とは、神仏祈願をした証しとして納めた札のことだが、時代が降っては建物の壁に貼るようになり、江戸時代には流行となり、独創的な意匠を競うものもあったようだ。神社仏閣からは、壁が汚くなることから度々廃止の要請があったようだが、巡礼にとっては祈願の印、剥がし落とそうにも手の届かない高い位置に貼るようになったともいう。この小柄には、千社札を貼るというより、直接筆で書き記しているように見える。千社札は紙製で、まず刷毛で糊を付けたところに千社札を押し当てて付けるという。であれば糊をつけている場面か、それではあまりにも野暮ったい図だ。柱には文字のような描写もあることから、筆者は、筆で直接書き記した例もあると考えている。
古川常珍(つねたか)は江戸の金工。父は町彫の祖の一人でもある横谷宗に学んでいることから、その流れを受けて片切彫を得意とした。この小柄は、片切彫で総体を描き、鳥居の背後に迫る桜樹を毛彫で表現した作品。縦位置を巧みに用いて迫り出した鳥居の笠木、背伸びする巡礼の真剣な様子などを的確に描いている。桜は毛彫で繊細。
千社札貼巡礼図小柄 銘 古川常珍(花押)
千社札を貼る旅の巡礼であろうか、江戸時代の風俗を知ることの出来る貴重な資料でもある。千社札とは、神仏祈願をした証しとして納めた札のことだが、時代が降っては建物の壁に貼るようになり、江戸時代には流行となり、独創的な意匠を競うものもあったようだ。神社仏閣からは、壁が汚くなることから度々廃止の要請があったようだが、巡礼にとっては祈願の印、剥がし落とそうにも手の届かない高い位置に貼るようになったともいう。この小柄には、千社札を貼るというより、直接筆で書き記しているように見える。千社札は紙製で、まず刷毛で糊を付けたところに千社札を押し当てて付けるという。であれば糊をつけている場面か、それではあまりにも野暮ったい図だ。柱には文字のような描写もあることから、筆者は、筆で直接書き記した例もあると考えている。
古川常珍(つねたか)は江戸の金工。父は町彫の祖の一人でもある横谷宗に学んでいることから、その流れを受けて片切彫を得意とした。この小柄は、片切彫で総体を描き、鳥居の背後に迫る桜樹を毛彫で表現した作品。縦位置を巧みに用いて迫り出した鳥居の笠木、背伸びする巡礼の真剣な様子などを的確に描いている。桜は毛彫で繊細。