雨龍図鐔 甚吾
雨龍図鐔 無銘甚吾
先に紹介した野鯉図鐔の一つと同様、裏面に三鈷が表されている作雨龍図鐔。地造りはなだらかな仕上げで抑揚があり、まさに楽焼の肌を想わせるが、図柄は薄肉彫で、主題の周囲を鋤き下げる手法は採っていない。風雨を意味する斜の線が、鏨で削ぎ取ったかのように鋭く、鯉の背景に施されている瀧の線と同様に状況と激しく揺れ動く空気感を表現している。龍は草体に表現され、薄肉彫りに銀の摺り付け象嵌。雲間に潜む龍神の図で、まさに竜巻の如く雲の渦巻く様子を想わせる巧みな表現。銀の表面がとろけたように変質して色合い紫黒色に沈んでおり、もちろん拭き込めば銀の光沢は黒味を失うことなく戻せるのだが、この渋い風合いも捨て難い。何て魅力的な龍を意匠するのであろうか。後藤の龍とは全く異質な存在感を創出している。□
雨龍図鐔 無銘甚吾
先に紹介した野鯉図鐔の一つと同様、裏面に三鈷が表されている作雨龍図鐔。地造りはなだらかな仕上げで抑揚があり、まさに楽焼の肌を想わせるが、図柄は薄肉彫で、主題の周囲を鋤き下げる手法は採っていない。風雨を意味する斜の線が、鏨で削ぎ取ったかのように鋭く、鯉の背景に施されている瀧の線と同様に状況と激しく揺れ動く空気感を表現している。龍は草体に表現され、薄肉彫りに銀の摺り付け象嵌。雲間に潜む龍神の図で、まさに竜巻の如く雲の渦巻く様子を想わせる巧みな表現。銀の表面がとろけたように変質して色合い紫黒色に沈んでおり、もちろん拭き込めば銀の光沢は黒味を失うことなく戻せるのだが、この渋い風合いも捨て難い。何て魅力的な龍を意匠するのであろうか。後藤の龍とは全く異質な存在感を創出している。□