菊花透図鐔 平田

菊花透図鐔 無銘平田
平田の特徴は、時代のあがる甲冑師鐔や刀匠鐔のような、過ぎることのない装飾だが、実はそこに強い主張が隠されている。感覚的なものだけでなく、技術的にも鎚で叩くだけというような素朴な工法のみではなく、的確に施した槌の痕跡を美観とし、錆に覆われたその質感をも楽しむためのものとし、素銅や真鍮地の表面に施されている微妙な凹凸の文様は特殊な腐らかしの手法で表わすなど、これらを手捻りの茶器に擬えたこともあるが、焼成された粘土の表面に生じた自然の変質とは本質を意にする優れた計算の上で成されたもの。自然味もすべてが巧みな技術の上でのものであるのだが、手技を感じさせないところに大きな魅力がある。
さて、そのような平田の作品の中でも菊花を題に得た鐔が多々みられる。肥後菊と呼ばれる、花弁が細い筒状に見えるという特徴のある菊花が主題で、平田には陰の透かし模様で、甚吾には心象的な表現になる作品が多い。この鐔も菊花を印象付ける作。赤銅地を縦篠鑢で地荒し風に仕立て、簡潔な陰の表現で菊花を透かしている。左右大透の鐔と同様に菊花部分が櫃穴としている。地荒し風の鐔の表面は、鑢で突いたように微妙に凹凸しており、甲冑師鐔に間々みられる仕上げを想わせる表情である。


菊花透図鐔 無銘平田
平田の特徴は、時代のあがる甲冑師鐔や刀匠鐔のような、過ぎることのない装飾だが、実はそこに強い主張が隠されている。感覚的なものだけでなく、技術的にも鎚で叩くだけというような素朴な工法のみではなく、的確に施した槌の痕跡を美観とし、錆に覆われたその質感をも楽しむためのものとし、素銅や真鍮地の表面に施されている微妙な凹凸の文様は特殊な腐らかしの手法で表わすなど、これらを手捻りの茶器に擬えたこともあるが、焼成された粘土の表面に生じた自然の変質とは本質を意にする優れた計算の上で成されたもの。自然味もすべてが巧みな技術の上でのものであるのだが、手技を感じさせないところに大きな魅力がある。
さて、そのような平田の作品の中でも菊花を題に得た鐔が多々みられる。肥後菊と呼ばれる、花弁が細い筒状に見えるという特徴のある菊花が主題で、平田には陰の透かし模様で、甚吾には心象的な表現になる作品が多い。この鐔も菊花を印象付ける作。赤銅地を縦篠鑢で地荒し風に仕立て、簡潔な陰の表現で菊花を透かしている。左右大透の鐔と同様に菊花部分が櫃穴としている。地荒し風の鐔の表面は、鑢で突いたように微妙に凹凸しており、甲冑師鐔に間々みられる仕上げを想わせる表情である。