鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

猿猴図鐔 壽次

2010-04-08 | 
猿猴図鐔 壽次

 
猿猴図鐔 銘 壽次

 東龍斎(とうりゅうさい)派の作品には独特の風合いがある。桜に関わる図では壽矩の桜に雪華図鐔を紹介した。比較して鑑賞すると、地造りや構成、耳の仕立てなどに流派の特色が良く分かると思う。その東龍斎派の壽次(としつぐ)の、猿猴図鐔である。深山幽谷の趣のある画面ながら、遠い月に桜の花をささげている猿猴の姿が美しくも愛らしい。桜を持たせることで擬人化したわけではなく、明らかに猿が人と同じ感情を抱いているであろうという視点で作品化したもの。
 鉄地を鋤き下げ、耳を二重に仕立てて洞窟あるいは雲間から眺めているような構成とし、高彫に金銀朧銀の象嵌を加えた手法。再度言うが、何とも愛らしい作品である。江戸時代後期。

猿猴に馬図鐔 後藤

2010-04-08 | 
猿猴に馬図鐔 後藤


猿猴に馬図鐔 無銘後藤

 古く、厩(うまや)では猿を飼うを常としていた。伝承では猿が馬の病魔を救うとも、馬の病いを猿の病変によって逸早く知るとも言われている。一方の猿にとっては、人と動物の間にあって、現代でいうならスピリチュアなる存在感を示していたともいえようか。犬猿の仲とは逆に、猿と馬は仲の良い間がらと捉えられていたようで、装剣具の図には間々みられる。
 この鐔では、猿が御幣を手にしていることから、日吉神社の使いとされている猿による祓えの意味があろうかと思われる。馬は美しく飾られていることから、何らかの儀式が始まるのであろう、落ち着かぬ馬の気を静めるために猿が登用されたとも言えよう。美しく咲き誇る桜の下での一場面である。赤銅魚子地高彫金銀素銅の色絵。江戸時代前期の後藤の作品。