今年のラグビーW杯日本大会は南アフリカの優勝で幕を閉じたの
だが、優勝した南アフリカは屈強な体格というアドバンテージを生
かしたスタイルで敵陣で試合を進める事を優先にしていた。
ラグビーではボールを保持するポゼッションとプレーする場所が
自陣か敵陣というエリアの両方の数値がデータとして出るわけで、
力の差があれば敵陣でボールを長く持つ事もできるが実力が拮抗し
ている場合はどちらが優れているかという価値観が違う。
ラグビーがプロ化された90年代後半あたりからペナルティキッ
クをタッチに蹴り出してもマイボールラインアウトになり、ライン
アウトでジャンパーを持ち上げる事ができるリフティングが認可さ
れてからは一時期キックが減った。
というのもボールはキープしているものの自陣ゴール前まで攻め
込まれたシチュエーションではタッチキックに逃れても相手ボール
ラインアウトでキープされ攻め込まれるだけだから、自陣ゴールを
背にしていてもボールさえキープしていれば攻撃という価値観が広
がりキックしても相手ボールになるだけだからキック=攻撃権の放
棄というケースが多いアメフト的な感覚のセオリーができていた。
つまりポゼッション重視の思想だったのだが今大会で話題になっ
たジャッカルなどボールを奪い取ったりノットリリースザボールの
ようなボール保持側に起きる反則を誘発するプレーが出始めてから、
自陣でボールをキープし続けてもボールを奪い取られたりノットリ
リースザボールの反則でペナルティキックを与えてしまうリスクが
高くなったのだ。
そうなるとディフェンスに自信を持つチームはボールを持たなく
ても敵陣でプレーし反則を誘ったり、ボールを奪い取ってターンオ
ーバーした方が得点チャンスは上がる事になる。
そこでキックの重要度が増してきて相手とのミドルレンジにパン
トを上げ再奪取を試みたり、プレッシャーをかけノックオンを誘っ
たりするボックスキックのような以前ではあまり見る事のなかった
プレーが当たり前のように見られるようになったのだ。
今大会の南アフリカは正しくそれで日本戦の前半など日本の方が
ポゼッションは高いものの、なかなか敵陣に入れずに後半は自陣で
ボールに絡まれて反則を取られPGというパターンが目立った。
つまりディフェンス技術が上がったためポゼッションよりエリア
という思想が主流になってきているのだが、だからといって南アフ
リカのようなフィジカルを持たないチームがコレを真似るのは危険
だろう。
物事には流行り廃りがあるので日本も前回のような単なるポゼッ
ションだけでなく、キックを織り交ぜたスタイルを持ち込んだよう
な柔軟性がより求められるという事になるわけでポゼッションとエ
リアのどちらを重視するかというのは永遠のテーマになると思う。