開店前夜

10年前の今日は開店前夜、翌12月1日から新築した店で
営業という事になっていたのだ。
　150ｍほどある坂道のてっぺんが商店街のアーケードの
交差点になっており我が家はそこから2軒下にある。
一方仮店舗は、その坂の下から2軒目にあるのだからそれ
なりに便利ではあった。
　10年前のこの日は土曜日で11月だというのに、そこそこ
お客さんが来てくれた。だから営業終了は受け付けが19:00
までながら20:00頃まで仕事をしてそれから引越しとなる。
　忘れもしないのが氷雨が降っており翌日は雪になるかも
知れないという事だった。
　本来ならこちらは第1月、火曜が連休のため‘4日の水曜日
からの開店にすれば？’という声もあったが信心深い母が
日を見たりお払いなどをしてくれる人に見てもらったところ
1日開店が最適という事だったので、この日にこだわったのだ。
　営業終了後に備品を運ぶのだが冷たい雨が降っているので
かなり大変だ。家を建てた業者に頼んで軽トラを借りて店の
象徴であるサインポールを運ぶのが最も大変だった。なにせ
2台あった軽トラのうちボロな方しか事務所になく、それを
運転するだけでも大変なのにサインポールは父と2人で運び
出す大きさだったので雨のなか荷台に積むだけでも一苦労。
　また髭剃り用に使うタオルの蒸し器もけっこうかさばるのだ。
　運び終えると今度は翌日の営業開始に備えて使用する道具
整理に追われる。新装されたばかりなので新品独特の匂いも
するし狭かった仮店舗に比べて雲泥の差なのだが片づけで慌
しく、喜ぶ余裕もない。
　悪い事に近所トラブルで店の前の駐車スペースのインター
ロッキングを埋め込む作業も2日、3日の連休にずれ込んでしま
い、手違いで店用のテレビのセットもできてないままの営業
開始となっていたのだ。
　全てが終ったのが23:30を過ぎており冷え込みが激しくなる
なか夜は更けていった。