キンシャサの奇跡から40年

 今から40年前の日本時間の今日ザイールの首都・キンシャサで
行なわれた世界ヘビー級タイトルマッチで、挑戦者のモハメド・
アリが王者のジョージ・フォアマンを8RでKOし当時としては
32歳の高齢での世界王者返り咲きを果たした‘キンシャサの奇跡’
の日である。

 試合は1Rから殺人的強打を誇るフォアマンがアリをロープに
詰めて猛攻を加えるのだが、アリはガードを固めて凌ぎ打ち疲れた
ところに右のカウンターを打ち込んで倒したというもの。

 試合前の予想ではアリが倒せずに判定負けしたタフなジョー・
フレージャーを2Rで6度も倒しアリのアゴを骨折させ判定勝ち
したケン・ノートンをも2RでTKOしているフォアマンが、最大の
武器である足が衰えたアリを何ラウンドで仕留めるかというのが大
半を占めていたので結果を受けて‘世紀の番狂わせ’とか‘キンシャ
サの奇跡’というフレーズが溢れ返りカリスマ的な人気を急上昇させ
たのだった。

 40年経った今キンシャサの奇跡を振り返ると巨体に似合わず繊細
だったフォアマンは中立地だったにも拘らず、会場の雰囲気がアリの
応援一色だった事に神経を消耗させてしまったという一面がある。

 プロモーターだったドン・キングは‘我々黒人の故郷’と語った
ザイールのキンシャサだがイスラム教徒でベトナム戦争への徴兵を
拒否しライセンス剥奪という憂き目を乗り越えた反体制派のアリに
対し、キリスト教徒でメキシコ五輪では金メダルを取った際に国旗を
振って喜びを露にしたフォアマンを比べるとザイールの民衆は熱狂
的に‘アリ、ボンバイエ(アリやっちまえ)’とアリを支持しフォア
マンは憎悪の的になってしまったのだ。

 ただでさえ世界戦を含め早いラウンドで倒す反面ペース配分が当然
のように稚拙だったフォアマンは、そういう雰囲気にナーバスになり
1分1秒でも早く倒して帰りたいという思いに駆られ3Rぐらいでスタ
ミナを使い切ってしまったとの事。

 一方のアリはフォアマンが3月のノートン戦で2RTKO勝ちした
のを見て‘もしノートンが6R以降まで戦えば倒されていたのはフォ
アマン'と語っていたようにフォアマンのスタミナ不足やペース配分の
稚拙さを知っていたようだ。

 だからこそガードを固めて自らロープに寄りかかりフォアマンの
パンチの威力を体を流して衝撃を最小限に留めるロープ・ア・ドープ
が、効果的にフォアマンのスタミナを奪い取っていったのだった。

 個人的にもボクシングの戦いがリングの中だけではないという事を
初めて知った一戦だったし、アリの狡知の前に敗れたフォアマンが
20年後に戦略の限りを尽くして世界ヘビー級王者に返り咲くとは こ
の時は想像だにしなかった。

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