今年の選抜高校野球の1回戦で常総学院が米子北戦で1・2番が
それぞれ5盗塁を決めるなど、合計13盗塁を決め9-1で圧勝した
のだが1試合最多盗塁の大会記録は14だから1つ足りなかった。
大会記録の14盗塁は41年前の74年に広島商が2回戦で大分商
戦で記録したものだが、なんと前年夏の優勝メンバーが残っていた
広島商は大分商相手に14盗塁しながら2-3で敗れて夏春連覇を逃し
ているのだ。
ただ広島商が14盗塁できたのは大分商のエース・亀島がナックル
ボーラーで、5回にキャッチャーの宮本がファウル打球を喉に直撃
されて退場するという2つの要素があった。
幸いにして20年程前に来店していたお客さんが この試合のスコア
ブックを持っており、書き写させてもらったのがあるので内容を記
してみる。
ちなみに広島商は前年夏に決勝で静岡をサヨナラスクイズを決め
3-2で勝って優勝したメンバーが残って秋の中国大会でも優勝し、
夏春連覇をかけて臨んだ大会で初戦でも苫小牧工に2-0で勝って迎
えた2回戦だった。
1回:1アウトから2番が四球で出塁し3番の時に盗塁し2アウト後
4番がエラーで2アウト1・3塁からWスチールで先制。
5番の時に暴投で3塁に進み四球で1・3塁から1塁ランナーが
盗塁成功するも6番が倒れ1点止まり。
3回:前の回7番以下が3者連続三振だったが逆転され2点を追う
状況で1番がヒットで出塁して盗塁するが2番以下凡退。
4回:5番がヒットで出塁し2つの盗塁で1アウト3塁から7番の
タイムリーで1点返し、盗塁で1アウト2塁も後続凡退。
5回:1番が四球で出塁し盗塁と内野ゴロで1アウト3塁から3番
スクイズもホームでアウト。
1塁に残った3番が盗塁するが4番三振で無得点。
6回:5番がヒットで出塁し盗塁しノーアウト2塁から1アウト後
3盗失敗し、四球で出た7番が盗塁するが8番凡退。
7回:9番が2ベースで出塁し1アウト後3盗に成功するが後続が
凡退。
9回:8回は2アウトから6番内野安打も7番凡退して迎え、1アウト
から9番がヒットで出塁し盗塁で1アウト2塁とするが連続
内野ゴロで試合終了。
大分商は3回に四球で出塁した1番がバントで2塁に進み3番のタイ
ムリーで追い付くと送球の間に打者走者が2塁に進み4番のタイムリ
ーで勝ち越し、更に3つ目の四球で押し出しの1点が入り一挙3点を
挙げて逃げ切った形で4回以降は7回の2アウト1・3塁ぐらいだから
ワンチャンスを生かしての勝利だった。
面白いのが2回を除いて毎回ランナーを出した広島商だが3回から
7回までノーアウト2塁を作りながらランナーを進められず‘お家芸’
である送りバントを失敗しているので犠打&犠飛が0というのは意外だ。
スコアブックを見るとノーアウト2塁で迎えた打者が全て追い込
まれているのが分かるのでナックルボールに手こずった形になるの
だろうがナックルボールはスピード的には緩いので盗塁はしやすい
反面、当時も珍しいため空振りも多くバントもしづらかったのだろ
うから諸刃の刃の魅力満点という事か。
実は前年夏の3回戦で広島商は大分代表の日田林工と対戦し0-2と
リードされた直後の攻撃で1点を返した後に2ランスクイズを決めて
3-2で逆転勝ちしていたのだが、今度は同じ大分県代表の大分商に
ベスト8をかけた試合で2-3で敗れて夏春連覇を逃すという皮肉な
結果に終わったわけだ。
前評判の高かった広島商だが夏の予選も2回戦あたりで敗れてお
り、選抜で最多盗塁記録を作りながら敗れてからチームのリズムが
狂ったのだろうか。
一方の大分商は春夏合わせて5度のベスト8がある中で、この
広島商戦の勝ちこそが甲子園における最高の金星に違いない。