野村克也氏をしても記者席とベンチでは考えが変わるのか

 先月亡くなった野村克也氏は80年にライオンズで引退し90年に
スワローズの監督に就任するまで10年間評論会をしていたのだが、
個人的に氏の語る評論は大いに勉強になり参考にしていた。

 特に82年9月30日に名古屋で行われたドラゴンズージャイアン
ツ戦で1点ビハインドだったドラゴンズが8回裏に西本聖を攻め、
1アウト満塁OR1・3塁のチャンスで2番・平野謙の代打に木俣達
彦を送ったシーンについて‘ベンチは犠牲フライで1点を考え木俣
を送ったのだろうが、むしろ平野をそのまま打たせた方がジャイ
アンツにとって嫌だったのではないか’と語っていたのだ。 

 たしかに外野フライでも同点のチャンスだから木俣というのは
今でもセオリーとして正解だろう。

 ただしシュートが得意な西本に対し足の遅い木俣なら内野ゴロ
を打たせれば併殺だから気が楽なのに対し、俊足の平野なら外野
フライを打つ確率は低いものの併殺はないし前進守備を敷けば強
い当たりを打てると内野の間を抜ける可能性が高くジャイアンツ
にとっては平野がそのままだった方が野村氏の評論通り嫌だった
と思う。

 このシチュエーションは90年10月21日に行われた日本シリーズ
G2でジャイアンツが2-7で迎えた4回1アウト満塁から緒方耕一の
犠牲フライで1点返したところで、ライオンズは工藤公康から潮崎
哲也にスイッチするとジャイアンツは川相昌弘に替えて大森剛を
代打に送るのだが敢えなく内野フライに倒れた。

 野村氏的には右サイドハンドの潮崎に対し長打のある左打者の
大森は一見するとプレッシャーがかかりそうだがルーキーだし、
粗っぽさがあるのに対し川相ならファールで粘って四球で3番の
ウォーレン・クロマティにつなぐ事もできるというのでないかと
思ったりしていた。

 実際に7回OR8回ならこの策もOKだが4回で守備の要である川相
を下げてまで大森を使う事に疑問があったし、代わりに出場した
上田和明がミスで追加点まで許していたのだ。

 ところが野村氏もスワローズの監督になった92年7月5日のスワ
ローズージャイアンツ戦では、同じような事をやっているのだか
ら記者席で見るのと実際にベンチで見るのでは違うのかと実感し
てしまう。

 神宮での首位攻防戦でジャイアンツ2連勝で迎えたG3は7回まで
スワローズが4-1でリードしていたのだが8回に大久保博元のHRで
2点差にすると、9回に1アウトから岡崎郁が歩き原辰徳の2ランで
追い付いた裏に先頭の古田敦也が2ベースで出塁。

 続く広沢克己がバントで送るとジャイアンツは満塁策を取りスワ
ローズはPHに荒井幸雄を起用したのだが、当時ジャイアンツ寄りで
見ていた私には‘ラッキー’と思ったのだ。

 というのもジャイアンツの石毛博史はコントロールに難があり
満塁策を取ったものの押し出しというのが最大の懸念だったので
粘られるタイプが嫌だったのに対し、荒井のような初球から打っ
てくるタイプの方がありがたいと思っていた。

 すると荒井はスクイズのサインを見落としていたのか初球の真ん
中のストライクを見逃すと、野村監督から頭を叩かれると直後に
1塁ファールフライに倒れてサヨナラのチャンスを逃すと10回に
大野雄次が決勝HRを放ちジャイアンツが5-4で勝ち3連勝したの
だった。

 こうしてみると沈着冷静に見える野村氏ですら3連敗だけは絶対
に避けなければ一戦で土壇場で追い付かれ、サヨナラのチャンスが
来ると記者席から評論するようなわけにはいかないのだと実感した
のだった。
 

 

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