ロンドン五輪ボクシングミドル級金メダリストの村田諒太がWBA
ミドル級王座決定戦で、ダウンを奪うなど優勢に試合を進めながら
1-2の判定負けを喫してから2週間が経つ。
試合後には‘疑惑の判定’などと言われて大騒ぎになりWBAの
会長までが誤審を認めて謝罪し再戦命令を出しただけでなく、当該
ジャッジを半年間サスペンデッドするなど異例の対応を見せるなど
話題を呼ぶ事になった。
村田諒太本人はNHKのクローズアップ現代に出演して現役続行
の意思を示しているし、ディフェンスの巧いエンダムに多くのパン
チを叩き込んでダウンを奪うなどダメージを与えているので敗れた
とはいえ村田の世界的な評価はむしろ上がっていると言えるだろう。
面白いのが村田がクローズアップ現代で‘最悪の結果は自分が変
な判定で自分が勝ってしまう事'と応えていたシーン。
注目度の高い一戦で疑惑の判定で自分が勝つ事でボクシングへの
信用を失う事の方を恐れているわけで、いかに村田がボクシング界
の事を考えているかという事が分かる。
更にボブ・アラムプロモーターが‘モハメド・アリやマニー・パッ
キャオですら負けているのだから’というコメントまであったように、
世界では強豪相手の負けはキャリアに傷がつくものではないという
事を証明している。
日本では‘無敗’とか‘全勝’を事の他ありがたがる傾向が強く、
その一方で‘負けるとキャリアに傷が付く’という考えから弱い相手
とばかりを戦わせる臆病なマッチメイクが横行しているのが現状だ。
実際に村田諒太もプロデビューした時から最近のボクサーは30代
からが華の選手も多いのに‘年齢的な事もあるので負けたら後はない’
的な報道が目立っていた。
しかし今回の村田は負けたからこそ学んだ事も多いし輪島功一や
辰吉丈一郎に長谷川穂積らの勝利がボクシングファンを熱狂させた
のは負けを乗り越えた事に対するものであり、確実に勝てる相手の
みを選んで安全運転に徹している現役世界王者への風当たりが強い
のも全くリスクを犯そうとしないからだというのが分かる。
今回の村田の試合でボクサーに求められるのは強敵相手に戦い続
ける事で、全勝を守っても確実に勝てる相手のみとの戦いでは意味
がないという事が分かったのではないだろうか。