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日本住宅会議2024サマーセミナー開催 急性期を脱していない能登地域

2024年09月03日 | 法律知識
 日本住宅会議2024年サマーセミナー「多発する大災害を教訓とした被災者の住まい・生活再建」が9月1日午後1時半から開催された。台風の影響で会場開催を見合わせ、オンラインで開催した。29年前の阪神淡路大震災以降、我が国は多くの災害が発生し、被災者支援等多くの課題と問題点が十分に生かされていない点などが明らかにされた。
 サマーセミナーは児玉善郎・日本住宅会議常任理事の司会で開会され、5人の学者・研究者から報告がされた。
 第1は「住宅復興の教訓~東日本大震災の復興検証」と題して、みやぎ震災復興研究センター事務局長の遠州尋美氏が講演。東日本大震災では人より安全なまちの再建が優先され、仮設住宅の解消に最大10年もかかり、住まいの再建の遅れと被災者離散を招いた。また、半壊や一部損壊は支援が不十分で、修理もできず損壊住宅に住み続ける被災者が発生している。また、災害公営住宅入居しても3年後に入居収入基準(公営住宅の基準)を超えていると割り増し家賃を徴収される。岩手県では入居収入基準を25万9千円に引上げ、東松島市では家賃を一律3割引き下げたところもある。能登半島地震からの復興に向けて、発生時の住宅損傷で罹災判定ではなく、命・人権を守ることを目的に住まい確保支援を行うべきであると強調した。
 第2は「復興過程における被災者の社会的孤立・孤独死を防ぐ居住政策の課題」について、追手門学院大学教授の田中正人氏が講演した。孤独死問題は高齢化・単身化の下で増加し、介護・貧困・社会的排除など様々な社会課題の結末と被災地における被災者の社会的孤立問題の帰結として孤独死問題が起きていると報告した。
 第3は「高齢化が進む大規模災害被災地における被災者の住まい・生活再建の課題と横浜の地域事前復興の取組み」について横浜市立大学准教授の石川永子氏が講演。能登半島地震で珠洲市の住民座談会に参加した経験を報告した。また、令和元年に発生した都市化型水害の住宅再建について川崎市で起きた河川の氾濫により浸水被害について被災エリアの462世帯を調査した結果を報告した。川崎市は、床下浸水叉は床上浸水の被害を受けた住宅・住居で半壊・一部損壊の状態が罹災証明で確認できる場合には一律30万円を支給した。借家世帯では、制度を知らないためか受給率が低かった。水害保険の未加入者などへの被災者への経済的な支援が必要であると指摘した。
 第4は「過疎・人口減少が進む大規模災害被災地自治体における住まい・生活復興対策の課題」について北陸学院大学教授の田中純一氏が講演した。能登半島で8月27日現在、断水1054戸(珠洲市742戸、輪島市312戸)、避難者数775人(1次437人、1・5次17人、2次避難所321人)、35都道府県公営住宅入居者555人、県内外福祉施設入所者約1400人という状況で、いまだ「急性期」を脱していないと能登地域の現状を報告した。
 第5は「原発災害からの復興~被災者・被災地が向き合える復興過程のあり方」について福島大学名誉教授の鈴木浩氏が講演した。原発災害からの復興について被災者や被災自治体などが共有できる「復興の姿」が見えない。原発事故の終息や廃炉の道筋が見えない中で、廃炉までの長期間に地震津波等どう対応するのか等指摘した。


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