東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

Q 不退去による困惑の具体例にはどのようなものがありますか

2007年02月28日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A ◎どんな場合があるか
 自宅にセールスマンが消火器、浄水器、英会話の教材、化粧品、下着等を売り込みにくることがよくあります。

 最近では銀行員や証券会社の社員が金融関係の商品を売り込みにくることも多いようです。これらの勧誘を断って、セールスマンがすぐに退去すれば問題はないのですが、いろいろ理由をつけて部屋から出て行かずにやむなく契約させられた経験をお持ちの方もいると思います。不退去の例はセールスマンが「契約書にサインするまで帰りませんよ」と言って居座るような場合です。

 ◎ 消費者契約法で契約を取り消すためには
 消費者契約法では、このような場合に契約を取り消せるようになりました。消費者が事業者の不退去行為に困惑させられてやむなく契約することは、消費者の自由な意思決定が妨げられたとみられるからです。

 ただ、契約を取り消すためには、さらに消費者が事業者であるセールスマンに対し「帰ってくれ」という退去すべき意思表示をすることが必要です。もっとも、「帰れ」という言葉だけではなく退去を要求する意思を消費者が間接的に示した場合も意思表示をしたものとして含めるべきです。①「時間がありませんから」と時間的余裕がないことを告知した場合、②「要りません」と契約をする意思がないことを明示した場合、③消費者が手を振り身振りで帰るように動作をした場合も含まれることになります。


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Q 取消の対象となる不退去による困惑とはどのようなことですか

2007年02月27日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A ◎事業者の不退去と消費者を退去させない場合の取消
 消費者契約法は、①事業者が消費者の居宅や勤務場所等で契約を勧誘する場合に、消費者から退去するように求められて退去しない場合、②事業者が勧誘している場所から消費者が退去する意思を示しているのに退去させない場合で、それによって消費者が困惑して契約を締結したときは、契約を取り消せる、としています(4条3項)。

 ◎事業者の不退去とは
 前者は「不退去」の場合で、事業者が消費者の自宅や勤務先(自衛の場合はその事務所)などに来て、契約の勧誘するに際し、消費者から退去を求める意思を示しているのに、これを無視して勧誘を継続することをいいます。退去を求める意思を示すとは、「帰ってくれ」と明確に要求する場合だけでなく、①時間的余裕のない旨を伝える場合(「急いでいますので」など)、②契約をしない旨明確に伝える場合(「お断りします」など)、③身振りで帰ってくれと示した場合などでも足りるとされています。消費者がこのような意思を示しているのに居座る場合が不退去になります。

 ◎不退去による困惑
 不退去によって「困惑して」契約を締結するというのは、消費者が困ってどうしてよいか分からない精神状態で契約をするということです。このような契約は自由な意思に基づく判断ではありませんから、自己責任を問うことは妥当性を欠くので、取消権を認めたものです。


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関西の底地買い業者担当者が替わった途端、借地人に面会強要

2007年02月26日 | 明渡しと地上げ問題
 豊島区目白に住むAさんの土地は、平成16年に地主が相続のために業者に売買してしまいました。その後、代理人として大阪の業者が訪問してきました。「この地域の更地価格は〇〇円するその5対5で底地を買取れ」と迫ってきました。Aさんは怖くなって組合に相談に来ました。
 Aさん、組合の事務局長の名刺を業者に渡し、今後、借地の売買及び契約については組合に入会したので組合の事務局長を窓口にして行うことを通知しました。業者は底地の売買について、その条件を7対3にするなどの案を提案してきましたが、Aさんの気持ちとしてはこのまま借地として住み続けたい、又、買取る資金もないと断ることにしました。
 その後、一年以上にわたって、組合事務所に地代の集金にきて何とか買い取ってもらえないか、売ってくれないかと言う話を持ち出してきたが条件その他がかみ合うことはありませんでした。半年くらい集金にこなかった業者はいつのまにか担当者が替わり、組合事務所には来ないでAさん宅を訪問し、面会を強要するようになりました。「いるのはわかっているんだ」「はやくでてこい」などと声を荒げて何度も戸をたたく様子に怖くなり組合事務所に電話してきました。
 ただちに警察に通報するよう指導し、組合事務所に近いのでただちに出向いていきました。相手の業者の担当者は消えていなくなりましたが。今後は、警察などと連絡を密にし対応することにすると共に必要ならば法的手段も検討することにしました。Aさん「とても一人ではできません。組合がたよりです」と語っていました。


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偽装請負業者に指導、06年度は急増1403件

2007年02月24日 | 最新情報
2007年02月23日23時15分(朝日新聞)

 厚生労働省が違法な「偽装請負」に絡んで人材会社など請負事業者を文書指導した件数は、06年4月から12月までの9カ月間に1403件に上り、05年度(616件)の倍以上に急増していることが23日わかった。大手製造業など発注業者への文書指導件数も582件と、05年度の1.6倍に増えている。

 06年4~12月に、立ち入り調査した請負事業者は1797件で、そのうち8割近くを文書指導した。発注業者も調査した7割以上で労働者派遣法などの違反が見つかっており、偽装請負が横行している状況を示す。

 偽装請負は、実態は工場などに労働者を派遣している状態なのに、業務請負契約を装うことで、企業側が様々な規制を免れる手法。厚労省は昨年9月、監督指導の強化を発表していた。

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借地権を相続したら、地主から契約書の書換えと名義変更料を請求されたが

2007年02月23日 | 相続と遺言、遺産分割
(問)父が亡くなり、私が借地権を相続することになりました。相続に当たり地主の承諾は必要ですか。地主は契約書の書換えと、名義書換料を要求してきています。それと、その建物を人に貸すことは出来ますか。建物を人に貸す場合は、地主の許可が必要ですか。(新宿区 会社員)

(答)借地権も他の遺産と同様に法的に当然相続人が相続する。親が死亡すると相続が開始され、親の有していた法律的地位が当然に相続人に一体として移転することを包括承継と言う(民法第896条)。包括承継は相続法の基本原理とされ、遺産中の不動産・動産のみならず債権や債務を承継するもので、被相続人の地位の承継とも解される。従って相続人は死亡した親の借地権を承継し、地主に対する権利・義務も一切引継ぐことになる。地主との賃貸借契約の内容を誠実に履行していれば何らの問題も惹起されない。「土地を借りた本人が死亡したのだから、土地を返してもらいたい」と地主に要求されても、それに応じることはない。
 まず、相談者の場合は、相続で借地権を譲り受けたので、名義書換の問題は発生しない。よって、地主の承諾は必要ない。名義書換料要求は不当であり、拒否しても何ら問題はない。勿論、契約書を新しく作り直す必要もないので、今まで通りでいい。相談者は、地主に「私が相続人になりました」と通知すればそれでいい。
次に、借地上の建物を人に貸すことについてであるが、何ら問題ない。借家を無断で他人に貸した場合は、転貸ということで契約解除の理由になる。しかし、借地人が地主から賃借しているのはあくまで土地であり、その土地上の建物は借地人の所有物であり、自由に使用収益することが出来る。借地契約は、借地人に建物を所有させることを目的とする契約だから、借地人が所有建物を貸して収益を上げることは借地契約の目的に反するものではなく、転貸にはならない。万が一、地主が「無断転貸をしている。契約違反だから承諾料を払え」等と言ってきても文句を言われる筋合いは無い。拒否すればいい。
 但し、借地上の建物を第三者に売却する場合は、借地の無断譲渡または無断転貸の問題が起きるので注意したい。


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 本日の相談はお休みします。




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住まいを守る全国連絡会が幹事会を開催

2007年02月22日 | 国民の住まいを守る全国連絡会
 住まい連の幹事会は2月19日午後5時30分から新宿アイランド・都市労事務所において開催された。
 坂庭代表幹事より前回幹事会以降の主な動きが報告された。討議では、住生活基本計画(都道府県計画)等と公共住宅問題等を中心に議論。公営住宅施行令一部の改正が入居者への大幅な収入期限の引下げ等に対して、多くの批判意見や自治体からも慎重意見が出され、1年延期して施行された。また、都道府県計画の公営住宅の供給目標が空家募集や建替えの戻り入居者数となっている問題点が指摘された。公団(機構)住宅の大幅削減問題が浮上するなど、住まい連としては5月中旬に「公共住宅の危機と国民の住まい」(仮題)のシンポ・集会の開催、合わせて「家賃問題」について研究会の設置を検討することが提起された。


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 2月22日・23は出張のため相談はお休みします。
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Q 消費者契約法ではどのような場合に契約の取消が認められるのですか。

2007年02月22日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A ◎誤認ケースの1つ目(4条1項1号)
 消費者契約法第4条は、契約の取消ができる場合として、消費者が誤認して契約を結んだときと困惑して契約を結んだときの2つの類型を挙げています。
 誤認ケースの1つ目は事業者が重要事項について事実と異なることを説明して、消費者をして誤認させ契約させた場合です。中古車を販売する場合、事故車ではないと説明していたのに実は事故車であった例などです。

 ◎誤認ケースの2つ目(4条1項2号)
 2つ目は絶対に儲かるなどと断定的に告げられて誤認し、契約をしてしまった場合です。先物取引は金は値上がりするから絶対儲かると営業マンに電話で勧誘されて買ったのに、値下がりして大損したような例などです。なお、断定的に告げられるのは、株価や利息など財産的な価値に関するものに限られ、痩せるとか美白になるというような非財産的価値について取消の対象にならないとされています。もっとも、この場合でも取引の対象にすべきだという考え方があります。

 ◎誤認ケースの3つ目
 3つ目は事業者から有利な事実だけ告げられて不利益な事実を告げられず誤認し、その事実を知っていれば契約しなかったような場合です。南側に高層ビルが建築されることを知っていたマンション業者から眺望が良いといわれて、隣に高層ビルが建つことを知らずにマンションを買った例などです。これらの行為は、事業者が消費者に提供すべき重要な情報の説明をきちんとしなかったことにより消費者を「誤認させた」ので、いずれも取り消すことが認められたものです。

 ◎困惑ケースの1つ目(4条3項1号)
 取消が認められる困惑ケースの1つ目は消費者が事業者に退去を求めたにもかかわらず、事業者が消費者に執拗につきまとい部屋から出て行かないので、立退かせるためやむなく契約したような場合です。

 ◎困惑ケースの2つ目(4条3項2号)
 2つ目は消費者が帰りたいと意思を示しているのに、事業者から契約するよう迫られ、店から出してもらえず、帰るためにやむなく契約したような場合です。


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Q どのようなときに消費者契約法は役に立つのですか。

2007年02月21日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A 第1に、裁判官が判断する際の根拠となります。判決によって、消費者が不本意に締結させられた契約をなかった状態に戻したり(取消権)、消費者に一方的に不利益な条項の効力を否定することで、消費者を不当な契約や契約条項から解放することができます。
 第2に、話合いによる解決の1つの基準となります。たとえば、消費者生活センターなど裁判によらない紛争解決機関における際には、消費者契約法に定められたルールをあるべき姿として、トラブル解決が目指されます。裁判所で和解する場合にも同様です。
 第3に、紛争が起きる前に、当事者が守るべきルールとして機能します。たとえば、事業者が契約の勧誘にあたって消費者の意思を尊重するよう配慮したり、不当な契約条項を見直すといった期待されています。現実にも、消費者契約法の施行前から、銀行取引約定書や各業界の標準約款などの見直しがすすめられています。
 以上の各場面を通じて消費者と事業者の間のトラブルを未然に防止し、また紛争を根本的に解決していくこと、これが消費者契約法に求められている役割です。


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戦後の住宅政策の変遷と住生活基本法で学習会開催

2007年02月20日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 東京多摩借組は、第8回目の「定例学習会」を2月17日午後1時30分から組合事務所において開催した。

 今回のテーマは、戦後の住宅政策の歴史、住生活基本法と東京都住宅マスタープラン(素案)の問題点、借地借家法改悪問題で、細谷事務局長がレジメと資料に基づき約1時間にわたり報告した。戦後日本の住宅政策がどのように変遷し、借地借家法の改悪につながっていくかを学習した。政府の基本計画は住宅関連産業の利益追求の場となり、公営住宅や住宅弱者切り捨ての中身が説明された。

 討論では、なぜ借地借家人など弱者を苛めようとするのかなど議論され、参加者の経験も活発に交流した。
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Q 消費者契約法はどのような契約に適用されるのですか。

2007年02月20日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A ◎労働契約を除くすべての消費者契約に適用
 原則として、すべての消費者契約に適用されます。労働契約については適用がありません。では、「消費者契約」とは何でしょうか。消費者契約法2条3項は「消費者契約とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう」としています。つまり、消費者契約かどうかは、契約の内容ではなく、誰と誰がどのような立場で契約を結んだかによって決まります。このように、「消費者」「事業者」という契約主体に着目して制定されたところが、本法律の特徴です。

 ◎いろいろなケースが想定される
 市民が一般生活の上で結ぶ契約のほとんどは「消費者契約」であるといってよいでしょう。具体的には、賃貸借契約、売買契約、立替払い契約、保険契約、保証契約、継続的サービス取引契約などで問題になるケースが想定されていますが、消費者と事業者の間の契約であれば、その契約の種類、性質を問わず、いわゆる「消費生活」とは関連の薄い投機投資や不動産取引も消費者契約に含まれることになります。


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賃貸借契約における原状回復特約の消費者契約法による無効

2007年02月20日 | 最高裁と判例集
本件は、自然損耗および通常の使用による損耗についての原状回復を賃借人の負担とする特約を含む賃貸借契約が、消費者契約法施行後に更新された場合について、その特約が消費者契約法10条により無効とされ、敷金の全額返還が認められた事例である。(京都地方裁判所平成16年3月16日判決 一部認容 裁判所ホームページ「裁判例情報」掲載)



事件の概要
X:原告(賃借人、個人)
Y:被告(賃貸人、個人)

1 Xは、平成10年7月にYから共同住宅の一室を賃借して入居をした際に、敷金として20万円をYに預託した。この賃貸借契約においては、期間が同月1日から翌年6月までとされ、また月額賃料は、5万5000円とされた他、退去時の原状回復について、次のような特約がなされた。すなわち自然損耗および通常の使用による損耗についてXが原状回復義務を負担し、また敷金は、建物明け渡し時にXが賃貸借契約に関しYに対し負担する債務を控除した残額を建物明け渡し後45日以内に返還する、というものである。なお、当事者に争いがないところから、Yは、事業者であると目される。

2 この賃貸借契約は1年ごとに合意により更新された。直近の更新としては、消費者契約法が施行された平成13年4月1日のあとである同年7月7日に更新の合意がなされている。そののち賃貸借契約は翌14年6月9日に終了し、同日にXはYに建物を明け渡した。しかしYが、建物の原状回復費用として20万円を要したとして敷金全額の返還を拒否したところから、XがYに対し、敷金20万円全額の返還を求めて提起したのが、本件訴訟である。

 この事件においてYは、上記の原状回復特約に基づく原状回復費用を控除すると返還すべき敷金はないことなどを主張したが、裁判所は、この原状回復特約は消費者契約法10条に基づき無効であるとし、Yに対し敷金全額の返還を命じた。




理由
1 消費者契約法の適用の有無
 消費者契約法の施行後である平成13年7月7日に締結された本件契約合意によって、同月1日をもって改めて本件建物の賃貸借契約が成立したから、更新後の賃貸借契約には消費者契約法の適用がある。したがって、従前の契約どおりとされ、更新後の賃貸借契約の内容になっている本件原状回復特約にも同法の適用がある。

 実質的に考えても、契約の更新がされるのは賃貸借契約のような継続的契約であるが、契約が同法施行前に締結されている限り、更新により同法施行後にいくら契約関係が存続しても同法の適用がないとすることは、同法の適用を受けることになる事業者の不利益を考慮しても、同法の制定経緯および同法1条の規定する目的にかんがみて不合理である。

2 本件原状回復特約は消費者契約法10条により無効か否か
 賃借人が、賃貸借契約の締結に当たって、明け渡し時に負担しなければならない自然損耗等による原状回復費用を予想することは困難であり (したがって、本件のように賃料には原状回復費用は含まれないと定められていても、そうでない場合に比べて賃料がどの程度安いのか判断することは困難である)、この点において、賃借人は、賃貸借契約締結の意思決定に当たっての十分な情報を有していないといえる。本件のような集合住宅の賃貸借において、入居申込者は、賃貸人または管理会社の作成した賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるような交渉力は有していないから、賃貸人の提示する契約条件をすべて承諾して契約を締結するか、あるいは契約しないかのどちらかの選択しかできないことは明らかである。

 これに対し、賃貸人は将来の自然損耗等による原状回復費用を予想することは可能であるから、これを賃料に含めて賃料額を決定し、あるいは賃貸借契約締結時に賃貸期間に応じて定額の原状回復費用を定め、その負担を契約条件とすることは可能であり、また、このような方法をとることによって、賃借人は、原状回複費用の高い安いを賃貸借契約締結の判断材料とすることができる。

 以上の点を総合考慮すれば、自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させることは、契約締結に当たっての情報力および交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害するものといえる。ゆえに本件原状回復特約は消費者契約法10条により無効であると解するのが相当である。




解説
1 敷金は、賃借人の債務を担保するため賃借人が賃貸人に預託する金銭である。賃貸借契約に基づいて生ずる賃借人の債務としては、例えば賃料債務や、賃借人の落ち度による賃借物件の汚損などに伴う損害を賠償する債務が考えられる。これらの債務が退去時に残っていれば、債務額を控除した金額が賃借人に返される(債務額が敷金の額を超える場合には、敷金は返ってこないし、賃借人は、不足額を払わなければならない)。これに対し、賃借人の債務が何ら残っていない場合には、賃貸人は、敷金の全額を返還しなければならない。

2 一般に賃借物件の修繕は、賃借人の落ち度による汚損・破損の場合を除いては、賃貸人の義務であり、その費用も賃貸人が負担する。民法606条で定められている原則であり、これと異なる趣旨の特約を裁判所がそのまま有効と認めることもある。なぜなら賃借人の通常の使用に伴う損耗は、賃料に含まれていると考えられるからである。なお、どこまでが通常使用損耗であるかも、しばしば争われるが、それを超える損耗であることは、賃貸人の側が主張・立証するべきである(加藤新太郎「実践的要件事実論の基礎/敷金返還請求訴訟における要件事実」 『月刊司法書士』374号参照)。

3 具体的に考えられる場面としては、(1)特約が不動文字(注)で前もって印刷されていて賃借人に十分に説明されないまま契約書に入れられたものであるから無効であると考えられる場合(例文解釈)、(2)修繕を賃借人負担とする特約があるが、そこにいう修繕とは通常損耗を超えた汚損などに限られると考えられる場合(信義則に基づく特約文言の制限解釈、民法1条2項)、(3)修繕を賃借人負担とする特約が著しく不公正なものであるため無効であると考えるべき場合(公序良俗違反、民法90条)および(4)消費者の義務を加重してその利益を一方的に害するものとして無効であると考えられる場合(消費者契約法10条)などがある。

 この事件の賃貸借契約は、最初の成立が消費者契約法施行前であったが、更新の合意が施行以後であったことから、(4)に当たるものとして扱われた。敷金トラブルの解決に画期的な判決であるが、一般にはこの事件とは異なり、賃貸人が事業者であると一概にいうことができない場合もあり得ることから、(3)などにより解決すべき場面が残されている。




参考判例
 特約の解釈として原状回復の義務付けられた損害に自然損耗等が含まれないとされた事例として、川口簡易裁判所平成9年2月18日判決(消費者法ニュース32号80ページ)、大阪高等裁判所平成12年8月22日判決(判例タイムズ1067号209ページ)他多数。特優賃法および住宅金融公庫法の適用事例であるが、特約が公序良俗に反し無効とされた近時の事例として、大阪地方裁判所平成15年6月30日判決(判例集末登載)。

 本件とは異なり特約が有効であるとされた事例として、東京地方裁判所平成12年12月18日判決(判例時報1758号66ページ)。市営住宅についてであるが、通常の住宅使用による自然減価分が毎月の家賃に含まれているとはいえないと判示した事例として、名古屋簡易裁判所平成16年1月30日判決(最高裁ホームページ掲載)。

 なお、近時の判例の動向については、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(改訂版)』(国土交通省住宅局・(財)不動産適正取引推進機構編(’04年2月発行))48ページ以下が詳しい。

注 不動文字 : 契約書等において、あらかじめ印刷された定型的な共通文言のこと


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東京の住宅政策でフォーラム開催

2007年02月19日 | 国と東京都の住宅政策
 東京住宅政策研究会主催による「東京の住まい・まちを考えるフォーラム」が、2月15日午後6時30分から池袋の東京芸術劇場会議室において開催された。
 開会に当り、和洋女子大学大学院教授の中島明子氏が挨拶した。中島氏は、今日の集会は昨年7月に東京住宅政策研究会が発行した「東京の住宅政策─地域居住政策の提言2005」の執筆者の報告会として行なう趣旨であることを述べた。また、同研究会は91年のバブルの時期に23区の自治体が独自の住宅政策をもって動き出した頃に発足し、21世紀に入り、住宅政策が大きな「改革」─市場主義と公共住宅政策の解体に直面していることを指摘した。
 次に、第1部「安心・安全の居住政策」、第2部「都市、地域コミュニティの再生」、第3部「自治体住宅行政と基礎自治体」に分かれて、学者・研究者・建築家・まちづくりのアドバイザー・自治体労働者・住宅運動団体等から専門的な報告が行なわれた。
 この中で、都庁職住宅局支部の森成明氏から、石原都政になって都営住宅は一戸も新規に建設されない一方で、南青山1丁目団体の建替では都営住宅敷地に45階建高層マンションを民間企業に建てさせ、都営住宅150戸に対し民間賃貸住宅を倍以上の390戸が入居する予定で、民間賃貸住宅の家賃は㎡1万円で最高が307㎡で307万円の家賃という驚くべき実態が明らかにされた。
 次に、「民間賃貸住宅と居住実態」について東借連の細谷紫朗専務理事より、東京が世界都市といっても、民間賃貸住宅の面積はアメリカの40%、ドイツ・フランスの60%と異常に狭く、多くの民間借家居住者は高家賃で劣悪な住環境に下で生活し、様々なトラブルにまきこまれていることを指摘した。また、普通借家契約から定期借家契約への切替を認めたり、正当事由の廃止などの動きを報告し、借家居住者の追いたてを容易にする借地借家法改悪を許すことはできないと訴えた。


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経済時評 「貧乏は国家の大病」

2007年02月18日 | 政治経済
いよいよ国会論戦がはじまりました。貧困や格差、ワーキングプアの実態をどうみるか。最低賃金制や社会保障制度をどう改善し、労働法制のゆがみをどう正すか。政治の責任が、鋭く問われています。

 「貧乏は国家の大病」―これは、日本のマルクス経済学の大先達、河上肇(一八七九―一九四六)の『貧乏物語』の一節です。

 『貧乏物語』は、一九一六年(大正五年)の九月から十二月にかけて「大阪朝日新聞」に連載されて大好評だった読物を一冊(岩波文庫で約百五十ページ)にまとめたものです。おそらく団塊の世代より上の世代なら一度は読んだことがある、聞いたことがあるという方は多いでしょう。私も、学生時代に読みましたが、最近読み直してみて、あらためて発見したことがいろいろとありました。

 そこで、今回は、古典的名著に学ぶという意味で『貧乏物語』をとりあげてみましょう。

90年前ワーキングプアに注目
 私が『貧乏物語』を再読して、あっと思ったことの一つは、河上肇は、すでにワーキングプアの問題に注目していることです。当時の「世界最富国」であった英国の貧乏の実態を統計的に分析して次のように述べています。

 「ことわざにかせぐに追い付く貧乏なしというが、……毎日規則正しく働いていながらただ賃銭が少ないために貧乏線以下に落ちている者が、(貧乏人の)全体の半ば以上すなわち約五割二分に達している」

 ここでいう「毎日規則正しく働いていながらただ賃銭が少ないために貧乏線以下」ということは、まさに今風に言えばワーキングプアにほかなりません。河上肇は、啄木の「はたらけど はたらけどなおわがくらし楽にならざり じっと手を見る」を引用しながら、英国だけでなく、米、仏、独のいずれでも「毎日規則正しく働いていながら」、なかなか貧乏から抜け出せない人が増えている、「いくら働いても、貧乏は免れぬぞという『絶望的の貧乏』なのである」と述べています。

大金持ちと貧乏人の格差拡大
 『貧乏物語』では、「毎日規則正しく働いていながら」貧乏から抜け出せないのは、社会に問題があるからだと指摘しています。

 「国民全体の人口に比すれば……きわめてわずかな人々の手に今日驚くべき巨万の富が集中されつつある」。「貧乏人はいかに多くとも、それと同時に他方には世界にまれなる大金持ちがいる」。

 貧乏は、個人の能力や甲斐性(かいしょう)などの問題ではない。大金持ちと貧乏人の格差の拡大の問題だというわけです。

 『貧乏物語』が執筆された一九一六年は、ちょうどレーニンが『帝国主義論』(一九一七)を執筆していたころでした。河上肇はそれを知るよしもなかったのですが、貧乏の原因を、資本輸出や侵略戦争とのかかわりでつかむ視点もすでに提起しています。

 当時の英国は、今日のアメリカと同じように、世界中に資本を輸出して、帝国主義的戦争をあっちこっちで起こしていました。とりわけ十九世紀末から二十世紀初頭は、南アフリカの支配をめぐる南ア戦争が問題になっていました。河上肇は、こうした帝国主義的政策が英国の貧乏の背景にあると述べています。

 もちろん『貧乏物語』は、河上肇がまだ『資本論』を本格的に研究する以前の著作ですから、貧困の原因論は、資本主義の科学的な分析にもとづくものとはいえません。また、貧困の救済策も、「富者の奢侈(しゃし)廃止をもって貧乏退治の第一策」とするなど、倫理主義的主張が中心になっています。

 ですから、岩波文庫の解題(大内兵衛)では、「河上博士は、このときはなお純然たるマルサス主義者」としています(私は、この評価は少し厳しすぎると思いますが)。しかし、河上肇は、「貧乏は国家の大病」、「社会の大病」として、資本主義社会における貧困問題の核心をつかんでいました。

ロイド・ジョージの「人民予算」
 『貧乏物語』には、「付録」として、当時のイギリスの政治家、ロイド・ジョージに関する河上肇の評伝がおさめられています。

 ロイド・ジョージ(一八六三―一九四五)は、二〇世紀初頭にイギリスの首相を長い間務め、国民保険法などを提案してイギリス福祉国家の基礎を築いた人物です。彼はまた、画期的な貧困対策のための「人民予算」(People’s Budget)を提案し、実現したことでも知られています。

 ロイド・ジョージの貧困対策は、なぜ「人民予算」と呼ばれたのか。その財源策が、(1)年間所得五千ポンド以上の者への「超過税」、所得税への累進税率導入(2)相続税の約二倍への引き上げ、累進税率の強化(3)土地増価税、空閑地税、採鉱権税など、大金持ちや大地主への広範な増税策だったからです。(注)

 もともとロイド・ジョージは、大資本家を代表する自由党の政治家ですから、社会主義者ではないし、むしろ逆に反ソ・反革命の干渉戦争を推進した人物です。ですからレーニンは、ロイド・ジョージの階級的立場を「ブルジョアジーのすぐれた番頭」「政治的狡猾(こうかつ)漢」などと批判的に特徴づけています。

 にもかかわらず、なぜロイド・ジョージは、支配層からの「人民予算は社会主義的だ」という激しい攻撃にもひるまずに「人民予算」を実行したのか。それは、彼が「貧乏は国家の大病」であると深くとらえていたからに違いありません。そのために、『貧乏物語』のころの河上肇は、「真に貧乏退治の必要を理解せる大政治家」と評価したのでしょう。

 安倍首相も、「貧乏退治の必要を理解」するために、ロイド・ジョージの爪の垢(あか)でもせんじて飲んでみたらどうでしょうか。

 (友寄英隆 論説委員会)

 (注)増税による新財源は、貧困対策と同時に海軍増強のためにも使われた。




 『貧乏物語』 一九一六年の新聞連載中から数十万の読者の絶賛を博し、四七年の復刊から七二年の解題の追記が書かれるまでの間にも、「四〇万冊以上は売れた」(岩波文庫解題)という。 2007年2月17日(土)「しんぶん赤旗」


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Q 消費者契約法とは何ですか

2007年02月17日 | 消費者トラブルと消費者契約法
A 消費者と事業者とのトラブルを解決
 消費者契約法は、消費者と消費者を相手に取引をしている事業者との間のトラブルを消費者保護の視点から解決するための法律です。この法律の目的は事業者が消費者と比べて情報量や交渉力の点でより有利な立場にあることから、消費者が不当に不利益を蒙らないよう消費者を保護しようとするところにあります。

 契約の取消
その方法として、契約の取消や不当な契約条項の無効が定められています。契約の取消が認められるのは、契約時の重要な点に事実と異なる説明があって誤認したとき、値上がり確実という言葉により値が上がると誤認して株投資の契約したとき、知っていたら買わなかったような重要な事実を教えてもらえないままその事実がないと誤認して契約したとき、契約しないと帰らないとセールスマンに居座られたのでやむなく契約したとき、契約しないと店から帰らせてもらえないで無理やり契約させられたときなどです。
 消費者契約法では、事業者の勧誘内容や方法に問題があって、消費者が誤認したり、困惑したりして、するつもりのなかった契約をしたと気づいたときから、6ヶ月以内に契約を取り消すことができるようになりました。

 不当な条項は無効
また、事業者の損害賠償責任を免除する条項その他消費者の利益を一方的に害する条項は無効となりました。このように消費者契約法は事業者の問題のある対応に対し、消費者を保護するように配慮されています。(法学書院 消費者契約法がよくわかるQ&A)


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相続で家主が変わった賃貸マンション。退去するように言われたが、退去したくない。

2007年02月16日 | 借地借家の法律知識
[相談]
賃貸マンションの家主が亡くなり息子から「相続で自分が家主になった。立て替えるので4ヵ月後に退去してください。」との通知が来た。新築から10年住んだ賃貸マンションだが、老朽化もしていないし、出て行きたくない。新しい家主の要求に従わなくてはならないのか。(70代、男性)



相続で家主が替わっても、借主は原則的には今までと同じ条件で借りることができます。

★アドバイス
 家主が亡くなって、所有する賃貸マンションを相続した場合、相続人は賃貸マンションの借主との契約内容も引き継ぐことになります。つまり借主から見れば、賃貸マンションにそのまま住み続けられるということです。
 この事例では老朽化もしていないし、出て行きたくないと主張してみましょう。


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