レオパレス、遠い幕引き 人事刷新でも体質改善不安
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45420000Z20C19A5TJ1000/
賃貸アパート大手のレオパレス21は29日、アパートの施工不良を巡る問題で外部調査委員会の最終報告書
を公表した。創業者がコンプライアンス(法令順守)の体制づくりを怠ったと批判した。会社は再発防止
策を打ち出し、深山英世社長ら社内取締役7人の退任を決め、新生レオパレスの船出をアピールした。し
かし問題物件の改修はほとんど進まず、会社の体質改善に向けた課題は山積みで幕引きには遠い。
2018年春に表面化した施工不良では、19年2月に立ち上がった調査委が原因を調べた。
その最終報告書で、屋根裏に設ける延焼防止用の仕切り壁(界壁)の施工がない問題について、レオパレ
スが把握したと主張してきた18年より前から違法性の指摘が社内であったと認めた。オーナーとの訴訟を
通じても法令違反の情報が社内に流れたのに「素通り」してしまう「リスク感知体制の不備」があったと
経営陣の責任を指弾した。
特に創業者で社長だった深山祐助氏の「ワンマン体制」を指摘し、施工不良は「深山祐助氏らの落ち度が
主たる要因」だとした。その中で販売拡大を優先するあまり、自治体に虚偽申請するなど法令順守の姿勢
が軽視されたと断定した。
調査委委員長の伊藤鉄男弁護士(西村あさひ法律事務所)は同日の記者会見で、法令順守について「直接
違法なことをやらなきゃと思ってやった人はいないが、順法意識が皆に欠けていたことは感じた」と述べ
た。深山英世社長は「かねての企業風土で一連の問題が起き、改善できなかったことは残念だ。申し訳な
い」と謝罪した。
経営陣の大幅刷新も正式に発表した。深山氏と同じ創業家の忠広副社長を含む7人の社内取締役が6月27日
の定時株主総会で退任する。残るのは5月30日付で社長に就く宮尾文也取締役常務執行役員のみだ。
今回の報告書公表と人事刷新で問題の幕は引けそうになく、多くの課題が残る。
まず報告書で指摘されたコンプライアンス意識の欠如などを改めるため、組織体制や経営の見直しが進む
かだ。再発防止策で法令順守を担う部署の新設などを盛り込み、3人の社外取締役を5人に増やし、社内取
締役は7人から5人に減らすことにした。ただ深山英世氏が相談役に残るため、体質改善に差し障るのでは
との懸念は拭えない。
次に施工不良物件の取り扱いがある。レオパレスは問題発覚以降、全物件を対象に調査を進め、問題が確
認された場合は会社負担で改修しており、工事のために必要になった住人の引っ越しの費用も支払ってい
る。
4月末時点で調査を終えたのは約2万棟と半数にとどまる。調査したうちの7割、約1万5600棟で不備が見つ
かったが、大半の改修はできていない。今後の調査で不備物件が拡大し、費用が膨らむ恐れもある。
3月末の現預金は845億円で、1年前から220億円減った。手元資金(現預金と流動性のある有価証券など)
から有利子負債を除いたネットキャッシュは約510億円(3月末時点)。改修工事引当金として507億円計
上し会社は「資金の問題はない」とするが、支払いがかさめば手元流動性への不安は残る。
同社は地主からアパート建築を受注し完成後に一括借り上げして転貸する「サブリース」の形式をとる。
入居率が80%前後まで下がると、資金が流出する逆ざやに陥るとされる。4月の入居率は82.35%と過去1年
間で約10ポイント低下している。
同社は20年3月期の売上高を前期比1%減の5022億円、最終損益で1億円の黒字(前期は686億円の赤字)と
予想し、通期の入居率を85.2%と見込む。改修費の拡大やブランド力の低下による入居率の低迷が進め
ば、経営環境の悪化は避けられない。
(亀井慶一、太田明広)
レオパレス外部調査委「複数の人が関与し組織的」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45436920Z20C19A5TJC000/
賃貸アパート大手レオパレス21の施工不良問題を巡って、29日に最終報告書を公表した外部調査委員会の
記者会見での主なやりとりは次の通り。
――最終報告書のなかで深山英世現社長の責任について言及がなかったのはなぜか。
伊藤鉄男弁護士「今回の施工不備は今から20~25年前に行われたもの。ただ、品質問題に敏感に反応して
解決する機会はあった。チャンスを逃したことは残念だし、責任がある。今の経営陣に責任がないと考え
ているわけではない」
木目田裕弁護士「もっと早期に気付くべきポイントは複数あった。結局は『事なかれ主義』ゆえに、リス
ク管理能力が足りず、早期に対応する機会を逸してしまった。それは深山現社長を含めて歴代の経営陣の
責任、落ち度であると考えている」
――報告書では「全社的に事実に反する建築確認申請を行わせ、確認済証をだまし取った」との指摘があ
るが、組織的なのか。
木目田氏「当時、創業者の社長と一緒になって商品を開発していたので、そこだけを捉えて組織的と言っ
ていいのか分からない。ただ複数の人間が関与していたのは間違いない。組織的かと言われれば、組織的
だと考えている」
――報告書では「創業者の深山祐助氏が指示・明言したとまでは認定できない」と指摘しているが、「同
氏の発案指示により」とも書かれている。
木目田氏「(界壁に使っていた)発泡ウレタンは、深山氏が『これを使え』と指示していると関係者が話
している。それが法令に適合しなくてもいいから使えとまでは言っていないということだ」
――報告書では「ワンマン体制」とあるが、なぜワンマン体制に陥ったのか。
伊藤氏「『この会社は社長とそれ以外』だという人が複数いた。特に商品開発は直轄組織のようだった。
社長の席があって、そこで指示するという体制。普通では考えられない特殊な体制だった」
――社員は法律よりも(祐助氏の)指示の方が上という意識だったのか。
伊藤氏「違法なことだと思ってやった人はいないが、ヒアリングなどで順法意識がみな欠けていたと感じ
た」
――法令順守の意識が薄いといった企業体質はまだ続いているのか。
山本憲光弁護士「深山祐助氏が社長時代の経営が厳しい中で、新商品を次々に導入して立て直そうとして
いた。そのときに強力なリーダーシップで進めていたというのが大きな理由。その中で順法意識も乏しく
なっていた。経営陣が変わってからも、そういう企業風土はなくなっていなかった。対応が遅いとか、気
付くのが遅くなったというのは、やはり法令問題への感度の低さ。それは以前の企業風土から変わってい
なかったからだ」
――深山祐助氏への聞き取りで、おわびなどの言葉はあったか。
伊藤氏「経営者としての責任は感じている。ただ、施工不備については『全部、現場に任せていた』と話
していた」
――施工不備の規模は拡大しているように見える。さらなる調査の必要性は。
木目田氏「今後さらに追加的な調査をするかどうかは、関係各所、会社も含めて相談して、調べてくれと
いうことになれば前向きにやりたい」
――会社が発表した再発防止策はどのくらい効果があるとみるか。
木目田氏「通常行われる再発防止策のメニューは一通りそろっていると思う。ただ、我々が報告書に書い
たとおり、メニューと形はいいが、それをちゃんと(従業員の)腹の中に落とし込んでほしい。それがな
ければ機能しないと思っている」
レオパレス深山氏、法令順守「実効性に至らない点も」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45436910Z20C19A5TJC000/
レオパレス21は29日、退任が決まった深山英世社長と30日付で新社長となる宮尾文也取締役が東京都内で
記者会見した。アパートの施工不良問題に関する外部調査委員会による最終報告書の公表を受け、深山氏
は法令順守の体制作りで「実効性に至らない点があった」と話した。主なやりとりは以下の通り。
――外部調査委員会の報告書ではワンマンな企業風土が残っているとの指摘があった。
深山氏「リーマン・ショック後、業績回復のため体制をトップダウンからボトムアップにしようと言って
きたが、結果的に浸透していなかった。コンプライアンスで全従業員に意識を持ってもらうのは言葉だけ
では難しい。実効性に至らない点があった」
――社内取締役8人のうち7人を退任させる判断に至った理由は。
宮尾氏「経営責任もあるが、企業風土の改革には経営体制を刷新するのが一番必要ではないかという判断
だ」
――深山氏が相談役になると影響力は残るのでは。取締役への復帰の可能性は。
宮尾氏「深山氏は長く取締役を務め、賃貸事業部で数多くの企業との契約を進めてきた。その知見をもら
いたいと思っており、相談役や顧問に就任してもらう。非常勤でオーナーや企業への説明に同行をお願い
しようと思っている。(取締役への)復帰は考えていない」
――どのように企業風土を変えていくのか。
宮尾氏「賃貸住宅の建築や入居者への住まいの提供について、しっかり顧客目線に立って事業を進めた
い。(その上で)従業員との対話を重視する。経営層だけで動くのでは(風土を変えるのは)無理。従業
員と意見が異なるのは良いと思うが、最終的に同じ目線に立っていく」
――問題の収束はいつになるのか。
宮尾氏「国土交通省からも一定の期限(今夏と10月)を示されているので、そこを目標に全力で取り組
む。今期は問題を解決し、会社全体ですべての物件を補修できる形にしていく。また再発防止策を速やか
に実行し、オーナーや入居者、株主などの信頼を回復していきたい」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45420000Z20C19A5TJ1000/
賃貸アパート大手のレオパレス21は29日、アパートの施工不良を巡る問題で外部調査委員会の最終報告書
を公表した。創業者がコンプライアンス(法令順守)の体制づくりを怠ったと批判した。会社は再発防止
策を打ち出し、深山英世社長ら社内取締役7人の退任を決め、新生レオパレスの船出をアピールした。し
かし問題物件の改修はほとんど進まず、会社の体質改善に向けた課題は山積みで幕引きには遠い。
2018年春に表面化した施工不良では、19年2月に立ち上がった調査委が原因を調べた。
その最終報告書で、屋根裏に設ける延焼防止用の仕切り壁(界壁)の施工がない問題について、レオパレ
スが把握したと主張してきた18年より前から違法性の指摘が社内であったと認めた。オーナーとの訴訟を
通じても法令違反の情報が社内に流れたのに「素通り」してしまう「リスク感知体制の不備」があったと
経営陣の責任を指弾した。
特に創業者で社長だった深山祐助氏の「ワンマン体制」を指摘し、施工不良は「深山祐助氏らの落ち度が
主たる要因」だとした。その中で販売拡大を優先するあまり、自治体に虚偽申請するなど法令順守の姿勢
が軽視されたと断定した。
調査委委員長の伊藤鉄男弁護士(西村あさひ法律事務所)は同日の記者会見で、法令順守について「直接
違法なことをやらなきゃと思ってやった人はいないが、順法意識が皆に欠けていたことは感じた」と述べ
た。深山英世社長は「かねての企業風土で一連の問題が起き、改善できなかったことは残念だ。申し訳な
い」と謝罪した。
経営陣の大幅刷新も正式に発表した。深山氏と同じ創業家の忠広副社長を含む7人の社内取締役が6月27日
の定時株主総会で退任する。残るのは5月30日付で社長に就く宮尾文也取締役常務執行役員のみだ。
今回の報告書公表と人事刷新で問題の幕は引けそうになく、多くの課題が残る。
まず報告書で指摘されたコンプライアンス意識の欠如などを改めるため、組織体制や経営の見直しが進む
かだ。再発防止策で法令順守を担う部署の新設などを盛り込み、3人の社外取締役を5人に増やし、社内取
締役は7人から5人に減らすことにした。ただ深山英世氏が相談役に残るため、体質改善に差し障るのでは
との懸念は拭えない。
次に施工不良物件の取り扱いがある。レオパレスは問題発覚以降、全物件を対象に調査を進め、問題が確
認された場合は会社負担で改修しており、工事のために必要になった住人の引っ越しの費用も支払ってい
る。
4月末時点で調査を終えたのは約2万棟と半数にとどまる。調査したうちの7割、約1万5600棟で不備が見つ
かったが、大半の改修はできていない。今後の調査で不備物件が拡大し、費用が膨らむ恐れもある。
3月末の現預金は845億円で、1年前から220億円減った。手元資金(現預金と流動性のある有価証券など)
から有利子負債を除いたネットキャッシュは約510億円(3月末時点)。改修工事引当金として507億円計
上し会社は「資金の問題はない」とするが、支払いがかさめば手元流動性への不安は残る。
同社は地主からアパート建築を受注し完成後に一括借り上げして転貸する「サブリース」の形式をとる。
入居率が80%前後まで下がると、資金が流出する逆ざやに陥るとされる。4月の入居率は82.35%と過去1年
間で約10ポイント低下している。
同社は20年3月期の売上高を前期比1%減の5022億円、最終損益で1億円の黒字(前期は686億円の赤字)と
予想し、通期の入居率を85.2%と見込む。改修費の拡大やブランド力の低下による入居率の低迷が進め
ば、経営環境の悪化は避けられない。
(亀井慶一、太田明広)
レオパレス外部調査委「複数の人が関与し組織的」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45436920Z20C19A5TJC000/
賃貸アパート大手レオパレス21の施工不良問題を巡って、29日に最終報告書を公表した外部調査委員会の
記者会見での主なやりとりは次の通り。
――最終報告書のなかで深山英世現社長の責任について言及がなかったのはなぜか。
伊藤鉄男弁護士「今回の施工不備は今から20~25年前に行われたもの。ただ、品質問題に敏感に反応して
解決する機会はあった。チャンスを逃したことは残念だし、責任がある。今の経営陣に責任がないと考え
ているわけではない」
木目田裕弁護士「もっと早期に気付くべきポイントは複数あった。結局は『事なかれ主義』ゆえに、リス
ク管理能力が足りず、早期に対応する機会を逸してしまった。それは深山現社長を含めて歴代の経営陣の
責任、落ち度であると考えている」
――報告書では「全社的に事実に反する建築確認申請を行わせ、確認済証をだまし取った」との指摘があ
るが、組織的なのか。
木目田氏「当時、創業者の社長と一緒になって商品を開発していたので、そこだけを捉えて組織的と言っ
ていいのか分からない。ただ複数の人間が関与していたのは間違いない。組織的かと言われれば、組織的
だと考えている」
――報告書では「創業者の深山祐助氏が指示・明言したとまでは認定できない」と指摘しているが、「同
氏の発案指示により」とも書かれている。
木目田氏「(界壁に使っていた)発泡ウレタンは、深山氏が『これを使え』と指示していると関係者が話
している。それが法令に適合しなくてもいいから使えとまでは言っていないということだ」
――報告書では「ワンマン体制」とあるが、なぜワンマン体制に陥ったのか。
伊藤氏「『この会社は社長とそれ以外』だという人が複数いた。特に商品開発は直轄組織のようだった。
社長の席があって、そこで指示するという体制。普通では考えられない特殊な体制だった」
――社員は法律よりも(祐助氏の)指示の方が上という意識だったのか。
伊藤氏「違法なことだと思ってやった人はいないが、ヒアリングなどで順法意識がみな欠けていたと感じ
た」
――法令順守の意識が薄いといった企業体質はまだ続いているのか。
山本憲光弁護士「深山祐助氏が社長時代の経営が厳しい中で、新商品を次々に導入して立て直そうとして
いた。そのときに強力なリーダーシップで進めていたというのが大きな理由。その中で順法意識も乏しく
なっていた。経営陣が変わってからも、そういう企業風土はなくなっていなかった。対応が遅いとか、気
付くのが遅くなったというのは、やはり法令問題への感度の低さ。それは以前の企業風土から変わってい
なかったからだ」
――深山祐助氏への聞き取りで、おわびなどの言葉はあったか。
伊藤氏「経営者としての責任は感じている。ただ、施工不備については『全部、現場に任せていた』と話
していた」
――施工不備の規模は拡大しているように見える。さらなる調査の必要性は。
木目田氏「今後さらに追加的な調査をするかどうかは、関係各所、会社も含めて相談して、調べてくれと
いうことになれば前向きにやりたい」
――会社が発表した再発防止策はどのくらい効果があるとみるか。
木目田氏「通常行われる再発防止策のメニューは一通りそろっていると思う。ただ、我々が報告書に書い
たとおり、メニューと形はいいが、それをちゃんと(従業員の)腹の中に落とし込んでほしい。それがな
ければ機能しないと思っている」
レオパレス深山氏、法令順守「実効性に至らない点も」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45436910Z20C19A5TJC000/
レオパレス21は29日、退任が決まった深山英世社長と30日付で新社長となる宮尾文也取締役が東京都内で
記者会見した。アパートの施工不良問題に関する外部調査委員会による最終報告書の公表を受け、深山氏
は法令順守の体制作りで「実効性に至らない点があった」と話した。主なやりとりは以下の通り。
――外部調査委員会の報告書ではワンマンな企業風土が残っているとの指摘があった。
深山氏「リーマン・ショック後、業績回復のため体制をトップダウンからボトムアップにしようと言って
きたが、結果的に浸透していなかった。コンプライアンスで全従業員に意識を持ってもらうのは言葉だけ
では難しい。実効性に至らない点があった」
――社内取締役8人のうち7人を退任させる判断に至った理由は。
宮尾氏「経営責任もあるが、企業風土の改革には経営体制を刷新するのが一番必要ではないかという判断
だ」
――深山氏が相談役になると影響力は残るのでは。取締役への復帰の可能性は。
宮尾氏「深山氏は長く取締役を務め、賃貸事業部で数多くの企業との契約を進めてきた。その知見をもら
いたいと思っており、相談役や顧問に就任してもらう。非常勤でオーナーや企業への説明に同行をお願い
しようと思っている。(取締役への)復帰は考えていない」
――どのように企業風土を変えていくのか。
宮尾氏「賃貸住宅の建築や入居者への住まいの提供について、しっかり顧客目線に立って事業を進めた
い。(その上で)従業員との対話を重視する。経営層だけで動くのでは(風土を変えるのは)無理。従業
員と意見が異なるのは良いと思うが、最終的に同じ目線に立っていく」
――問題の収束はいつになるのか。
宮尾氏「国土交通省からも一定の期限(今夏と10月)を示されているので、そこを目標に全力で取り組
む。今期は問題を解決し、会社全体ですべての物件を補修できる形にしていく。また再発防止策を速やか
に実行し、オーナーや入居者、株主などの信頼を回復していきたい」