(Q)家主の息子が結婚するので、3年の借家の期限に明渡しが認められるための正当事由とは。
(A)正当事由の制定の足跡
借家法1条の2には、貸主は「自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」のみに、更新を拒絶し、また解約の申入れができるとしています。ご質問の場合は、期間を3年と定めたのですから、更新拒絶ができるか否かということになります。
大正10年に、借家人保護のため、借家法が制定されましたが、建物の賃借権に対抗力を与え、借家人に造作買取請求権を認めましたが、解約については、申入れ期間を従来の3ヶ月から6ヶ月に延長したに止まり(同法3条1項)、解約の申入れ事由については、なんの制限も加えませんでした。これでは建物の賃借人の地位は依然不安定なものなので、昭和16年の借家法の改正で、新たに1条ノ2を加え、先に述べたように内容に制限を加えたのです。
正当事由の内容は
それでは、その正当事由の内容ですが、貸主が自分で使用する必要があるときは、それだけで正当事由があるということになって、明渡しが認められるという解釈が初めのうちは取られていたのですが、これでは、貸主側の主観的事情に片寄りすぎて、借家人は実質的に保護されないとの批判が出て、昭和19年9月18日の大審院判例で「建物賃貸人が自ら使用する必要ありて解約の申入れをなすに付正当事由ありとなすには、賃貸人及び賃借人双方の利害得失を比較考慮するの外、なお進んで、公益上社会上その他各般の事情を斟酌してこれを決すべきものとす」と判断を示したのです。この考え方は最高裁でも引き継がれています。
つまり、上記の考え方によると、賃貸人、賃借人の双方の事情を比較考慮して決めるべきだ、というものです。
上記の判例にもあるとおり、公益上、社会上その他いろいろの事情をも考慮して決めるとありますが、その時の住宅事情がどうあるかが大きな判断要素になることはもちろんです。
正当事由については、平成4年8月1日に施行された借地借家法では、「貸主及び借主の双方において、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の貸主が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引き換えに借主に対して財産上の給付(立退き料)をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して正当事由を判断する」と規定しております(28条)。
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