東京多摩借地借家人組合

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東京高裁が地裁の相当額の更新料の支払い義務を認める判決を覆す画期的な判決

2020年07月31日 | 最高裁と判例集
 組合ニュース601号で紹介した「相当額の更新料を支払う」特約を有効とし、坪8万円で215万円の更新料請求を認めた東京地裁の判決の控訴審で、東京高裁は本年7月20日に判決の言い渡しがあり、地主の更新料請求を棄却し、借地人が逆転勝訴の判決が下りました。

 「相当額の更新料を支払う」の合意が更新料支払い義務を発生させるかが控訴審の最大の争点となり、高裁判決では以下のように判断を示しています。

「被控訴人(地主)は、本件本訴の根拠として、本合意書3項(契約満了時、更新を希望する場合、………相当の更新料を支払う)を主張する。しかしながら、更新料の支払請求権が具体的権利性を有するのは、それが、更新料の額を算出することができる程度の具体的基準が定められていることが必要であるところ、本件合意第3項は、その「相当の更新料」という文言が、抽象的で、裁判所において客観的に更新料の額を算出することが出来る程度の具体的基準ではないから、具体的権利性を肯定することはできない。………したがって、本件合意第3項において、具体的な更新料支払い義務を定めたとは認めることができない」と判事しています。

 東借連の常任弁護団では、東京地裁の判決について担当した種田和敏弁護士と協議し、不当な判決であり判決を覆すために4名の弁護士が加わり、弁護団の尽力で今回の逆転勝訴につながりました。

 契約書の特約条項で「相当の更新料を支払う」、「適正な更新料を支払う」で書き込まれる事例が増えています。高額な更新料を請求されることに借地人の不安は高く、今回の判決は借地人にとっては大変勇気づけられる判決です。地主側は最高裁に上告することが予想される中、最高裁でも同様な判決が下されることを期待したいと思います。(東京多摩借組ニュースより)
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住まいは人権デー 「コロナ禍の住宅問題と住宅人権を考える」シンポジウム開催

2020年07月14日 | 新型コロナ被害と家賃 住宅支援
 2020年「住まいは人権デー」の集い「コロナ禍の住宅問題と住宅人権を考える」が、6月14日午後2時から練馬区区民プラザ・ココネリで開催されました。

 坂庭国晴氏(住まい連代表幹事)から「問われる日本の住宅政策と住宅人権」と題して報告。

派遣労働者などコロナ禍で解雇を迫られ、家賃が支払えなくなり、住まいを失う事態が発生していることについて、国連・人間居住会議(ハビタット)の宣言「居住の権利は最も重要な基本的人権」から見ても、大きく侵害されている実態にあると指摘しました。

 次に、東京都立大学非常勤講師の小田川華子氏より、今年2月8日に開催した住まいについて自由に語る座談会で参加者から出た住宅の悩みや声を紹介し、家賃負担を軽減し、家賃補助がないと東京では暮らしていけないと強調しました。

 続いて、7人の方からコロナ危機での住宅困窮者、居住者の状況についてリレートークが行われました。ジャーナリストの藤田和恵氏は、行政の側では住まいを失って生活保護の申請をすると、都内では生活保護の家賃扶助の範囲で借りられる住宅がないために、無料低額宿泊所を紹介するなどこれまでの住宅無策の実態を報告しました。

 東借連会長の細谷紫朗氏は、新型コロナウイルスの影響による賃料不払いは契約解除理由に当たるのかについて、法務省が5月にホームページで発表した「新型コロナウイルス感染症の影響により3か月程度の賃料不払いが生じても、不払いの前後の状況等を踏まえ、信頼関係が破壊されていないと判断される」を照会し、賃借人は家賃が支払えなくなっても、直ちには退去する必要はない。住居確保給付金や生活保護等の支援を受け、国は賃料不払いを理由に明渡し請求しないための法制化を強く求めました。
(全国借地借家人新聞より)

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賃貸住宅の管理業務等の適正化法が今国会で成立

2020年07月14日 | 最新情報
 不動産管理会社が賃貸マンションを一括で借り上げて賃借人を募集して貸し、家賃を保証するサブリース事業者が勧誘時に約束した賃料を支払わないまま倒産したり、30年の保証の約束を守らず、オーナーに支払う家賃を一方的に減額するなどのトラブルの多発を受け、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(管理業法)が今国会で成立しました。

 これにより、賃貸住宅管理業に登録制度が創設され、管理委託契約やサブリースの借り上げ契約の際に重要事項説明が義務化されます。誇大広告の禁止、不当な勧誘等の禁止、賃料改定内容を事前に説明することでトランブルの防止につなげます。違反した場合には、登録の取り消し、業務停止命令、罰金などが科せられます。なお管理戸数200戸未満の事業者の登録義務が適用除外になったり、賃借人保護の規定が盛り込まれていない等不十分な点があります。

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国交省のガイドラインを無視し、不当な原状回復特約を根拠にリフォーム代を請求 少額訴訟で敷金残額返還訴訟

2020年07月08日 | 敷金と原状回復
 八王子市石川町の共同住宅を今年の4月30日に退去した橋本さん(仮名)は、5月に管理する不動産会社から敷金精算明細者が送られてビックリしました。2年1ヵ月しか住んでおらず、退去時の立会いでも原状回復について何らの指摘もなかったにもかかわらず、敷金13万円からクリーニング費用、畳の表替え費用として税込みで8万5800円を差し引き、4万4200円しか戻らないと言われました。

 納得ができない橋本さんは、依然相談したことのある多摩借組に相談し、組合から橋本さんと連名で、特約条項の「借主の都合で解約の時、リフォーム代(畳、ふすま、障子、クロス等の張替え、クリーニング)の費用は、借主の負担として敷金より充当する」は消費者契約法に反し、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドラン」の賃借人に特別な負担を課す特約の要件、①特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在する。②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること。③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。以上の3要件にいずれにも該当せず、今回のリフォーム代の請求は認められない。敷金全額返金するよう通知しました。

 その後、不動産会社から組合に電話がありましたが、何と国交省のガイドラインは認めず、特約は有効の一点張り、裁判で家主と争うことになるがそれでもいいかと言っても、家主も承知しているとの返事でした。家主に対しても同様の文書を出し、最高裁判決(平成17年12月16日)も同封しましたが、不動産会社は敷金からリフォーム代を差し引いた残金4万4200円を組合に現金書留で送ってきました。

 橋本さんと相談し、話し合いによる解決は困難であるため、家主を相手に八王子簡易裁判所に敷金返還の少額訴訟を起こすことにしました。最高裁判決は、通常損耗に関する補修費用を賃借人が負担する旨の特約が成立していないとした有名な判決で、この判決を基にして国交省のガイドラインの中で特別な負担を課す特約の3つの要件が定められました。
 いまだに、このような不当な原状回復特約を結んでいる不動産会社がいることが驚きです。賃借人の使い方が悪くて建物や設備を汚損・破損させたなら別ですが、特約を根拠に敷金から勝手にリフォーム代を相殺するなど悪質であり、泣き寝入りすることなく最後は裁判所に訴えましょう。少額訴訟は費用も安く、誰でも利用できる制度です。書面の作成などご支援します。
(東京多摩借組ニュースより)
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URがコロナ関連支援策を発表

2020年07月07日 | コロナと家賃滞納
https://www.zenchin.com/news/ur-10.php

 独立行政法人都市再生機構(以下、UR都市機構:神奈川県横浜市)は、6月25日、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、入居希望者、既
存入居者共に新たな支援策・サービスを発表した。

家賃減額や分割払い延長など4点

 内容は主に4つ。1つ目は給付金活用世帯に向け、定期借家契約で通常の賃貸契約よりも賃料を安く提供する制度だ。生活保護、住居
確保給付金、休業手当、雇用調整助成金、持続化給付金を受給している個人、個人事業主を対象とする。2年または3年の定期借家契約
を条件に、通常より10~20%安い賃料で提供する。
 募集住戸は約450団地、約1800戸で受け付ける。募集期間は6月26日~9月30日。UR都市機構の広報担当者は、「開始間もないため、
申し込み件数の集計は取れていないが、住居確保給付金支給者から相談があった際には提案していく」と述べる。
 2つ目は、既存入居者に向けて、家賃・共益費の分割払いを受け付ける制度の延長についてだ。同支援策は、緊急事態宣言中の4月28
日から実施してきたが、7月末までをめどに延長する。これまでに家賃の分割払いを行っている世帯数は全国で約500世帯に及んでい
る。今後の更なる延長については、「7月末頃判断する」(広報担当者)という。
 3つ目が、UR内で引っ越しを行う場合の初期費用の軽減策だ。すでに預託している敷金から原状回復費用を差し引いた残金を、引っ
越し先の敷金として引き継ぐことを可能とした。
 最後の4つ目が、「新しい生活様式」に対応した新サービスだ。セカンドハウスやハウスシェアリングでの契約を可能とした。同社
の賃貸借契約は基本的に実需向けだが『マルチハビテーション』制度を活用すれば、セカンドハウスとして契約できる。また従来、世
帯もしくは単身での契約に限定していたが、ハウスシェアリング制度では、友人などと共に契約することもできるようになった。この
場合、入居者全員が契約者となる。両制度を併用すれば、通常よりも安くテレワーク用の物件を確保できる。
 さらに、UR団地へのキッチンカーの導入も開始。在宅勤務者が増加したことで、住宅地でのランチ需要が高まったことから、5月15
日から試験導入してきたが、さらに推進する。現在、キッチンカーとの提携は3社。同じくキッチンカー導入済みの団地数は3団地と
なっている。
 同法人では今後も新型コロナウイルスの影響を受けた世帯に対し、支援策を検討していくとしている。

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