東京多摩借地借家人組合

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更新料を支払う借地契約上の合意ない場合に更新料請求は認められない

2012年06月27日 | 最高裁と判例集
 東京地裁判例―更新料を支払う旨の借地契約上の合意がない場合に、地主からの更新料支払請求は認められないとされた二つの事例

(事案の概要と判旨)
【事例一】東京地裁平成二〇年八月二五日判決
 AはBに昭和二四年に土地を貸した(墨田区)。Aは死亡し、Cが相続。CとBは、昭和四三年に借地契約を合意更新(一回目)。この際、更新料四万円が払われた。昭和六三年に法定更新(二回目)。Bが平成五年死亡し、その子であるYが相続。地主Cが平成一八年死亡、その子Xが相続。平成二〇年二月に法定更新(三回目)。XはYに対し最後の更新につき一五〇万円(土地時価の五%)の更新料を請求して提訴した賃貸借契約書には更新料に関する定めが一切なかった。判決は、「宅地賃貸借契約における賃貸期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人の賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するとはいえない(最高裁第二小法廷昭和五一年一〇月一日判決)」として、地主の更新料支払請求を棄却した。

【事例二】東京地裁平成二〇年八月二九日判決
 DはEに昭和二一年に土地を貸した(豊島区)。DとEは昭和四一年に合意更新(一回目)。さらにDとEは昭和六一年に合意更新(二回目)。Dは昭和六二年に死亡し子の甲が相続。Eは平成一六年死亡し配偶者の乙が相続。平成一八年は法定更新(三回目)。甲は、更新料の合意または慣習を根拠に五二五万円の更新料(土地時価の七%)を請求して提訴してきた。昭和六一年の合意更新時に作成した契約書には更新料の定めは一切なかったが、更新料と推定される二二〇万円の支払がEからDになされている。判決は、「次回の更新に際して更新料の支払が要件になるか否かは、貸主であるD側にとっても、借主であるE側にとっても重要な事項であり、これが当事者間で合意されたのであれば、本件賃貸借契約書にその趣旨の条項が書き込まれてしかるべきところ、本件賃貸借契約書にはそのような条項が存在しない」として更新料支払合意の存在を否定し、慣習を根拠とした甲の請求に対しては「一定の基準に従って当然に更新料を支払う旨の慣習が存在するとまで認めることはできない」として、地主の更新料支払請求を棄却した。

(寸評)
 右の【事例二】は筆者が代理した組合員の事例である。地主は控訴したが、第一回以前に取り下げ、請求棄却の一審判決が確定して解決した。借地契約書に更新料を支払う旨の条項がなく更新料支払合意が認められない場合に、借地契約が期間満了時に法定更新したときには、借地人には更新料の支払義務がなく、更新料を支払う事実たる慣習の存在は認められないというのは、【事例一】の判決も引用している昭和五一年最高裁判決により確定した解釈で、現在の下級審もこれに従っている事例として紹介する。(弁護士 田見高秀)

(東京借地借家人新聞より)
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NHKハートネットTV 6月19日放送 シリーズ 貧困拡大社会 若い世代を襲う“住まいの貧困”

2012年06月19日 | 最新情報
シリーズ貧困拡大社会。6月は、2日連続で「住まいの貧困」を取り上げます。2日目は、経済不況が長引く中、若い世代を中心に家を失うリスクが広がっている実態と背景に迫ります。金融危機以降、増加している「追い出し屋」被害。数か月、家賃を滞納しただけで、鍵を付け替えるなど、一方的に立ち退きを迫る違法な行為が相次いでいるといいます。背景には賃貸借契約のあり方の変化があると専門家は指摘します。雇用環境の変化により収入が不安定な人たちが増える中、保証会社と呼ばれる業者が強制的に家賃の回収を迫るケースが増えているというのです。一方で総務省の調査によれば、日本には全国に750万戸を超す空き家が存在しています。そんな空き家を利用して、“住まいの貧困層”のための居場所を確保しようと、立川市にあるNPO法人が立ち上がりました。しかし、不動産業者に協力を求めても、返ってくるのは冷たい反応ばかり。さらには慢性的な資金不足も重なり、計画は思うように進まない・・・。

番組では、相次ぐ「追い出し屋」被害の実態と、“住まいの貧困”から救い出そうと奔走する支援団体の活動を通して、今後の住宅のセーフティネットのあり方について考えていきます。



出演者
湯浅 誠さん(反貧困ネットワーク事務局長)

倉田 真由美さん(漫画家)

■番組ブログ

今回出演した倉田真由美さんから、収録を終えての感想が届いています。
シリーズ貧困拡大社会 番組ブログへ
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普通借地契約から定期借地契約への切り替えは無効

2012年06月15日 | 賃貸借契約
(問)私は父親の代から土地を借りています。借りた時期は戦前で、契約書は作成していません。平成7年に借地上の建物の改築を地主にお願いした際に、地主から契約書を新たに作成すること、建替えの承諾料を支払うことを要求され、地主指定の不動産業者の仲介で契約書を作成しました。
  
契約書について法律知識もなく、言われるままに契約書に署名捺印しました。
最近になって契約書を見てみると、確定期限付土地賃貸借契約書となっていて、契約期間が50年で契約の更新ができないと書いてあることが分かりました。契約書に署名捺印した以上、50年経ったら土地を返さないといけないのでしょうか。

(答)あなたの場合は、戦前から借地していたということは契約の更新に関しては旧借地法が適用されます。平成3年に借地法が改正され、平成4年8月1日から借地借家法(新法)が施行され、借地借家法では第22条で存続期間50年以上の契約の更新の規定のない定期借地契約を締結することが可能となりました。

しかし、旧法の借地契約を新法の定期借地契約へ切り替えが合意の上でできるかといえば、借地借家法では附則第6条「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による」と定めてある通り旧借地法が適用され、このような更新のない確定期限付土地賃貸借契約は旧借地法第11条により更新に関する借地権者に不利な契約に当り無効(強行規定違反)になります。契約期間については、建物再築による借地権の期間の延長により、旧借地法7条に基づき建物滅失時から20年間の契約期間が延長されています。

 なお、消費者契約法が施行された平成13年4月1日以降に消費者の無知に付け込んで結んだ契約は、消費者契約第4条の取消しや同法10条で無効にすることも可能です。


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

☎ 042(526)1094
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更新料・震災問題学習会 八王子労政会館で6月29日開催

2012年06月12日 | 借地借家問題セミナーと相談会
 借地や借家をしている方にとって、契約更新の度に高額な更新料を請求され、頭を悩ましている方が多いのではないでしょうか。借地借家人の方の中には、「更新料を支払わないと契約更新ができないのではないか」、「地主さん大家さんともめると後でしっぺ返しがくる」と思っておられる方が意外に多いのです。

ところが、更新料など1円も払わなくても、借地借家法ではなんの問題もなく、借地であれば更新料を支払ってしまった人と同じように20年の契約で更新できるのです。何百万円、何千万円という莫大なお金を支払っても、一円も払わなくても借地人の権利が法律上なんら変わらなく、20年の更新ができるのなら支払わない方がいいに決まっています。

昨年、賃貸住宅の更新料特約をめぐって最高裁で「一義的で具体的に記載された更新料条項は有効」との判決が下されました。一方、最高裁では借地契約に関して「更新料は事実たる慣習ではない」との判決も確定しています。今後、借地借家人は契約の更新に当り、賃貸借契約書を締結する際にどのようなことを注意して契約したらよいか、分かりやすくご説明します。
また、東日本大震災を契機に首都圏においても大地震が起きることが予想されます。震災で借地借家人の権利がどうなるのか学習致します。みなさん、お気軽にご参加下さい。(参加無料です)

■日時 6月29日(金)午後6時半~9時まで
■会場 八王子労政会館・第5会議室
■講師 東京多摩借地借家人組合事務局長 細谷 紫朗
※講演終了後、借地借家の賃貸トラブルの相談・質問受け付けます。
■参加無料 定員30人になり次第締め切ります。
■申込みは組合事務所にお電話下さい。
平成24年度の評価替えで固定資産税等が上がっています。便乗値上げに注意を!

〒190-0023 立川市柴崎町4-5-3いわなビル101
東京多摩借地借家人組合
電話 042(526)1094
Email:union.tama.sh@sepia.plala.or.jp
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東京城東借組が記念講演と定期総会を開催

2012年06月12日 | 東京借地借家人組合連合会
城東借地借家人組合の第2回定期総会が5月26日午後1時から浅草聖ヨハネ教会で開催された。

 第1部は「原発に依存しない社会をめざして」と題して鈴木浩名誉教授が記念講演を行った。第2部の定期総会ではこの1年の活動報告と会計報告、2012年度の活動方針と予算案が提案され確認された。新役員には川俣栄子組合長、大久保雅充事務局長等7名の役員を選出した。

 総会には東借連から佐藤会長、細谷事務局長が参加し、激励の挨拶を行った。
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法定更新しているのに更新料と更新手数料を請求される

2012年06月11日 | 契約更新と更新料
豊島区南大塚のマンションに住む田中さんは3月に管理する不動産会社から更新手続きのお知らせという通知を受け取った。中身は4月に満期となるので契約更新の手続きに来いというものであった。その際、更新料と事務手数料が更新に要する費用であるというものであった。

2年前に組合に入会し、修理修繕と賃料の減額で調停を行い、その際に話し合いがまとまらず合意更新が出来ず、法定更新となっていたものであった。今回の更新料請求と事務手数料の請求に納得がいかず相談に来た。結果は「2年前に修理修繕と賃料減額での話し合いで合意更新が出来ず法定更新となっていますので、今回の更新料請求は更新の時期ではないので断ります」との回答をした。

(東京借地借家人新聞より)


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更新料も地代値上げも撤回させ、地主に法定更新を認めさせる

2012年06月08日 | 契約更新と更新料
大田区西六郷地区で約19坪を賃借しているHさんは、地主の代理人となった不動産業者から連絡があり面会すると、平成24年6月30日の契約期間満了を控えて約20%の地代の値上げと坪当たり6万円の更新料を請求された。

Hさんは、組合総会参加し事務所を訪ねて、支払い義務のない更新料をなくす運動を理解している。更新料は支払わないし支払い義務がないことを即答。さらに、組合員であることを通告すると業者の担当者は驚き、「組合員なのか。組合の方針は分かるが再度検討してほしい」といわれHさんはその足で組合事務所を訪ねた。

方針通り更新料支払いを拒絶、通路が狭く建築許可が不可能な土地ですでに高額な地代であり値上げも拒否、地代の供託も確認した。

翌日、Hさんは業者に意向を伝えると、更新契約書は作成せず、地代値上げも更新料請求も撤回することで決着した。(東京借地借家人新聞より)



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管理会社の従業員の追い出し行為に賃貸人の共同不法行為責任が認められ、165万円の損害賠償が認められた

2012年06月04日 | 最高裁と判例集
 本件は、賃貸人から貸室の管理を委託されている管理会社の従業員が、当該貸室内にあった賃借人の家財道具等を搬出し、玄関鍵のシリンダーを交換して賃借人を追い出した行為(以下「本件行為」と言います。)について、①管理会社の当該従業員の不法行為について管理会社に使用者責任を、及び②賃貸人に共同不法行為責任を認めた事例です(大阪高裁平成23年6月10日判時2145.32)。

 賃借人は本件貸室を賃料月額3万5000円で賃借したものの、平成21年5月からの6か月分の賃料を滞納しました。これに対し管理会社は「入金の無い場合は、鍵をロックして解約させていただきます」との督促状を3回に渡り送りつけました。賃借人は当時、失業中であり、同年9月には生活保護開始決定を受けました。そのような中、同年10月、管理会社の従業員(賃貸人の子でもある)は、同行したリフォーム業者とともに本件行為に及びました。
 大阪地裁は、本件行為につき不法行為を認め管理会社の使用者責任を肯定したものの、賃貸人の共同不法行為責任を否定しました。また損害として、家財道具について4万300円、慰謝料として15万円の限度で認めたにすぎませんでした。

控訴審である大阪高裁は、原審同様、従業員の本件行為が不法行為に該当するのは明らかとし、管理会社の使用者責任を肯定しました。

他方で原審と異なり、賃貸人が本件貸室を含むマンションの所有者であり、管理会社に管理を委託し、本件賃貸借契約について管理会社にその管理権を行使するのに必要な代理権を包括的に授与していたこと、従業員が賃貸人の子であり、賃貸人が管理会社の取締役に就任していることを考慮し、管理会社が賃貸人から授与されていた包括的な代理権に基づき、賃貸人の子が管理会社の従業員として本件行為に及んだことについて、賃貸人も事前に包括的な承諾を与えていたと認められるとし、賃貸人の共同不法行為責任を認めました。また損害については、家財道具の損害について詳細に検討し計70万、慰謝料についても80万円を認容し、弁護士費用15万円とあわせ合計165万円を認めました。

上記引用判例時報の判例解説では、違法な自力救済(賃貸借契約が解除されている場合の実力行使)、違法な不動産侵奪(賃貸借契約が解除されていない場合の実力行使)が社会問題になるほど頻発しているとし、その違法はいうまでないことであり、「私人間の紛争であっても、法治国家である以上、その責任の厳然とした追及とその防止に向けた毅然とした対応とが求められるはず」(引用判時33頁)としています。

このような中、上記事実関係をもとに共同不法行為責任を認めた点は、裁判所として本件問題に「毅然とした対応」を示したものと言えるでしょう。そもそも法治国家である以上、違法な実力行使が許されるわけでないことは言うまでもないことです。また本件の賃借人のような状況に置かれている人は、いまのご時世、決して珍しくありません。本件行為はその弱みにつけ込む行為とも言えます。「厳然とした追及」と「毅然とした対応」がなされた事案として紹介します。(弁護士枝川充志)
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